環境条約シリーズ 366有害廃棄物の越境移動規制に関する南太平洋地域のワイガニ条約
2022年09月15日グローバルネット2022年9月号
前・上智大学教授
磯崎 博司
南太平洋地域にはワイガニ条約(南太平洋フォーラム島嶼国への有害廃棄物および放射性廃棄物の輸入を禁止し、ならびに、南太平洋地域内での有害廃棄物の越境移動および管理を規制する条約)があり、有害物・廃棄物規制3条約(バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約)、および、放射性廃棄物や海洋投棄に関する諸条約のための地域実施体制を構築している。同条約は1995年にバーゼル条約第11条の下の地域協定として採択され、2001年に発効した。
規制対象は、附属書Ⅰ(発生・組成分類)に掲載されている廃棄物であって、附属書Ⅱ(性状分類)に該当するものである。なお、バーゼル条約とは異なり、放射性廃棄物および排他的経済水域にも適用される。その対象廃棄物について、南太平洋地域外からの輸入の禁止とともに、同地域内での、発生および越境移動の削減、海洋投棄の禁止、環境上適正な方法での処理の確保などが定められている。
他方で、附属書には放射性廃棄物は含まれていないが、第4条に特別規定がある。それは、南太平洋地域において放射性廃棄物について、開発途上締約国には輸入の禁止、先進締約国には開発途上締約国への輸出の禁止を定めており、すべての締約国には、海洋投棄や放射性物質に関する諸条約に従い海洋投棄の禁止、違法行為の通報、および、国際原子力機関の関連規則の遵守を定めている。その背景の一つには、日本が低レベル放射性廃棄物の海洋投棄を計画していたことがある(本誌1993年12月号)。
これまでの締約国会議において、報告制度との関わりで、通報、廃棄物移動、違法取引事例のそれぞれに関する書式が定められ、また、下部委員会として科学技術諮問委員会が設置された。そのほか、有害廃棄物・放射性廃棄物の管理に関するモデル国内法、有害廃棄物の越境移動の国内規制措置の策定指針、また、違法越境移動の発見・防止・規制のための手引き、有害物・廃棄物規制4条約(ワイガニ条約を含む)の実施のためのモデル国内法なども定められた。