フロント/話題と人奥村 奈津美さん(防災アナウンサー(フリー)、環境省森里川海アンバサダー)
2022年09月15日グローバルネット2022年9月号
災害への備えに温暖化防止のアクションを!
奥村さんは「防災関係者にも気候変動に目を向けてほしい」という思いから「サステナブル防災」というキーワードを造った。自宅の電気を再生可能エネルギーに切り替えたり、雨水タンクやコンポストを取り入れたりするなど、地球環境を守るために毎日実践できる暮らし方を、地震や水害などに備える防災活動に加えてほしいと訴えている。
奥村さんが防災に取り組むきっかけとなったのは、2011年3月の東日本大震災。当時、仙台の放送局でアナウンサーとして活動していたときに被災。加えて、被災した人の声をじかに聞き、災害の現場を見た。「地震の発生前ならできることがいっぱいあったのに、起きてしまってからでは手遅れ。報道に携わる身として最善を尽くしたものの、命を救うという点では何の役にも立てなかったことが悔しかった」と「防災アナウンサー」と名乗るようになった原点を振り返る。
その後、移籍で東北を離れたが、遠くからでもできる支援につなげたいと定期的に東北の被災地の取材を続けた。さらに、2014年の広島豪雨以降、激甚災害に指定されるレベルの自然災害が毎年のように各地で起きるようになり、東北以外の被災現場にも足を運ぶ中で防災士の資格を取るなど活動を本格化させてきた。
「当時、温暖化対策のことは災害報道の現場では触れる人もなく、防災の教科書にも一切書かれていなかった」ことに徐々に違和感と危機感を募らせ、「いくら災害に備えても地球そのものを守っていかないと根本治療にならないのではないか」という思いが「サステナブル防災」を生むことにつながった。2021年3月に出版した『子どもの命と未来を守る!「防災」新常識』(辰巳出版)でも、気候変動の研究者である江守正多さんへのインタビューを掲載し、「環境を守ることが究極の防災活動」だと発信している。コロナ禍の2020年5月から2年にわたり計60回開催したオンラインセミナーなどを通じて、「サステナブル防災」への共感の輪が未来を担う幼い子どもを持つママやパパに広がっていることを実感しているという。
「赤ちゃんの防災と障がい者や高齢者を対象にした福祉防災を中心に、今後は自分で自分を守ることのできない命をどう守るかをテーマに取り組んでいきたい」と意気込みを語る。3歳の男の子のお母さん。(希)