フロント/話題と人増村 江利子さん(おかえり株式会社 取締役 共同創業者、フリーランスエディター)
2022年06月15日グローバルネット2022年6月号
くらしの気付きを実践に
~BambooRollから、循環する生活を広げたい~
日々何気なく使い、捨てている日用品、トイレットペーパー。その原料や使用量、環境への影響を気にしたことはあるだろうか。おかえり株式会社が昨年1月に発売した、竹で作ったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」は、利用者が商品の製法や環境への影響に思いをはせ、循環する生活を実践するきっかけを提供する。
紙と芯の原料は100%竹で無漂白。工場では水力発電所の電気を利用している。プラスチックで包装せずにリサイクル段ボールに詰め、1箱18ロール、1,980円で届ける(定期便の料金。税込み、送料別)。配達の周期は、毎月から4ヵ月に1回の間で選ぶことができ、1箱をどれくらいのペースで使っているのかを利用者が意識できるようになっている。商品の細部に凝らしたこれらの工夫は、7年前に移住した長野県富士見町での生活経験から生まれている。
東京で働いていたとき、「ごみはマンションの収集所に置いておくだけだった」という増村さん。富士見町に移住後は、照明、パソコン、携帯電話、洗濯機以外の家電を一つずつ手放していった。また、ごみをなるべく出さないために使い捨てを控え、出たごみは17種類に細かく分別する生活を送ってきた。
移住前から、編集者としてエシカルな生活について取材・発信していた増村さんだが、読者の共感は得られる一方、誰かのくらしや社会を変えている実感が持てず、もどかしさを感じていた。そんな中、富士見町の生活で抱き始めた、「今、使い捨てているものが、一つ一つリユースやリサイクルできるものに代替されていくと良いな」、「情報ではなく、商品として選択肢を届けた方が、社会は変わるのではないか」といった思いから「おかえり」を創業。「リユースもリサイクルもできないもの」という視点から、まずトイレットペーパーに取り組むことにした。
製紙に適した慈竹は中国にしか生育していないため、現時点では中国で製造し輸入しているBamboo Rollだが、日本の放置竹林を減らすための国産化プロジェクトも一歩一歩進めている。「おかえり株式会社だけじゃなくて、いろんな地域に『竹の道の駅』のような拠点があり、各地の竹を使ったご当地バンブーロールができると良いな」と今後の夢を語った。(克)