フロント/話題と人竹内 昌義さん(株式会社 エネルギーまちづくり社代表取締役、一級建築士)
2022年05月17日グローバルネット2022年5月号
コンセントの向こう側まで考える建築家
~署名を集め建築物省エネ法改正案を国会へ~
政府は4月22日、住宅の省エネ化を進める建築物省エネ法の改正案を閣議決定、今国会に提出することになった。改正案は会期延長回避などの理由から提出見送りの可能性が取りざたされていた。
見送り撤回に向け、尽力した中心人物が竹内さん。オンライン署名キャンペーン「建築物省エネ法を国会に提出してください」を立ち上げ、SNSや自身のブログなどで積極的に発信し、国会議員へも説明して回るなど約3ヵ月間奔走した。その結果、署名は15,599名から集まり、昨今のエネルギー価格高騰や3月の東北地方の地震による電力需給切迫という状況も反映して、方針は大きく転換された。
改正案の内容は、現在中規模以上の建築物が対象の省エネ基準への適合義務が、2025年度からは新築の
全建築物に拡大されることが目玉で、中古住宅の改修支援や木材利用の促進も盛り込まれている。昨年度、国土交通省などが開催した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」に、竹内さんは地域の工務店でも高断熱高気密住宅を造ることができるということを普及する建築家という立場で委員として参加。「2050年までの脱炭素実現や快適な暮らしのためにも断熱性能の向上を」と提案を重ねてきた。
竹内さんは、1995年に建築家ユニット「みかんぐみ」を友人たちと共同で立ち上げ、公共施設や万博パビリオンなどの設計を手掛ける中で、環境配慮の必要性を感じた。また教鞭を執る東北芸術工科大学では、ヨーロッパの「冬も暖かくエコでかっこいい」というエコハウスの考え方を講義に取り入れた。学生には東日本大震災の被災地出身者も多かったことから、エネルギーの問題にも興味を持ち始めた。
「コンセントの向こう側から送られてくる電気がどのように作られているのかを理解すれば、自ずと断熱の重要性を感じられるはず」と言う竹内さんはその後、思いを一つにする建築家たちと「エネルギーまちづくり社」を設立。工務店などの専門家だけでなく、一般の人や行政の関係者も対象にワークショップなどを行い、建築物の断熱やエネルギーと地域づくりの関連性とその重要性について理解者を広げている。
自らを「行動派」と言う竹内さんの活動は、改正案成立が実現すればさらに加速するはずだ。(尚)