環境条約シリーズ 361バーゼル条約 E-wasteの規制強化
2022年04月15日グローバルネット2022年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
2019年には、世界でおよそ5,360万トンの電気電子機器廃棄物(WEEE、E-waste)が発生し、その380~1,070万トンは開発途上国へ輸出された。30年の発生量は7,470万トンに達すると予測されているが、その急増に適正処理やリサイクルは追いついていない。
実際、上記の19年発生量の82.6%(4,430万トン)は、環境上適正な管理(ESM)を受けておらず記録もない。同時に、それは有用資源の損失であり、19年発生量に含まれる原材料の実在価値は570億ドルに上ると試算されている。
E-wasteについて、バーゼル条約は順次規制を強化してきている(本誌2009年10月、11年11月、13年7月、15年10月)。その現行の制度では、有害なE-wasteには、事前同意、国際移動管理、および、開発途上国への輸出禁止改正(本誌1998年11月、2019年発効)の適用を通じてESMが確保されているが、有害ではないE-wasteには、それらは適用されず、監視・透明性もESMも確保されていない。しかし、後者であっても、最新技術で適正に処理されていなければ人の健康および環境に損害を生じさせる。
そのためスイスとガーナは、有害ではないE-wasteにも、事前同意、管理・監視手続き、透明性を確保するための条約改正案を提出した。それは、附属書の分類項目を以下のように変更することを定めている。
附属書IIへの項目Y49(有害ではないE-waste)の追加。附属書VIIIの項目A1180(有害なE-waste)の書き換え。附属書IXの項目B1110(有害ではないE-waste)およびB4030(使い捨てカメラ)の削除(どちらも新たなY49に含まれるため)。
これらにより、すべてのE-wasteにESMおよび最新技術が適用されるようになることに加えて、望まない輸入や違法取引の防止、環境・健康の向上、また、循環経済への貢献などの効果も期待されている。この改正案は、2022年6月に対面で開かれるバーゼル条約の第15回締約国会議の後半会合において審議される予定である。