フロント/話題と人小松 吾郎さん(一般社団法人 Protect Our Winters(POW) Japan 代表理事)
2022年04月15日グローバルネット2022年4月号
大切な雪を守り、行動を起こす仲間の力になりたい
~雪で滑り続けられる冬を目指して
スキーヤーやスノーボーダーにとって、「今年は雪が少ない」と感じる冬が増えている。Protect Our Winters (POW)Japanは、「行動する仲間たちの力となる」をミッションに、雪を愛する人たちが気候変動から冬を守る行動を後押しする活動を、長野県の白馬エリアを中心に展開する。
代表理事の小松さんが環境問題のことを考えるようになったのは、カナダでプロスノーボーダーとして活躍していた2000年頃のこと。先住民族の友人に、「おまえの仕事はすごくいいけど、それが自然を破壊していることは知っているか?」と言われた。リゾート開発の反対運動をしていた彼は、開発が彼らにとって大切な土地を切り開き、森林伐採につながることを教えてくれた。好きな自分の仕事に負の影響があることにショックを受けた小松さんは2005年に帰国後、スノーボーダーとしてフリーペーパーの制作やイベントの開催等に取り組む中で、環境問題についても伝えてきた。
米国発祥のPOWを2019年に日本で立ち上げたとき、活動の趣旨に賛同する仲間が続々と現われ、「皆、こんな活動を待っていたんだな」と感じた。「雪は環境の変化を受けやすく、多くの人が危機感を共有する一方、何をすればいいか分からず行動に移せない人が多い。行動を起こすきっかけにPOWがなれれば」と考えている。
昨年、年々スキー場の雪が減っている状況に危機感を抱いた一人の高校生から連絡をもらった。彼女は認証を得た国産木材で雪板を制作し遊ぶことを通して、気候変動や森林の問題を学ぶイベントを提案。「POWが伝えたい『自分が大切にするものを守るために、行動を起こす』という思いと合致する」と思った小松さんは、その企画を実現し彼女の行動を後押しした。
3月には、気候変動についてスキーヤーやスノーボーダーにどの程度問題意識があり、どのような対策を取るスキー場を応援したいのかを知ることを目的に、意識調査を実施。2,000件近く集まった回答結果はスキー場やスポーツ・アウトドア関連の企業に伝えることで、業界の変化も後押ししていくつもりだ。
「今は白馬エリアが中心の取り組みを、他の地域にも広げ、より多くの人に雪のことを考え、雪を守るための行動を起こしてほしい」と強く願っている。(克)