環境条約シリーズ 356第7回世界自然保護会議

2021年11月15日グローバルネット2021年11月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

IUCN(国際自然保護連合)の第7回世界自然保護会議(WCC7)(本誌1996年12月、2016年10月)は、2020年6月に予定されていたがコロナ禍のため2回延期されて、2021年9月3日から11日までフランス・マルセイユ(オンライン併用)で開催された。前半に世界自然保護フォーラム、後半に会員総会が開かれた。なお、初日には、地元主導活動、先住民族と自然、IUCNの将来行動、若者と将来、それぞれに関する四つのサミット会合も開かれた。

WCC7は、コロナ禍において、生物多様性条約と気候変動枠組条約の締約国会議に先立って開かれたため、新興感染症・生物多様性・気候変動の危機にどう対応するかがメインテーマとされ、以下のような内容の148件の決議と勧告が(そのうち109件は事前オンラインで)採択された。

新興感染症に関しては、ワンヘルス・アプローチの促進、コロナ禍または気候変動による損害からの自然に基づいた復興、復興予算の少なくとも10%を自然に資する事業へ振り向けることなどが求められた。

生物多様性条約における「ポスト2020生物多様性枠組」の検討に向けて、2030年までに陸と海の30%の保全管理(30 by 30)が提唱され、また、2025年までにアマゾン地域の80%の保全管理も求められた。併せて、土地・領域・水・海洋・自然資源に対する先住民族の権利保障、「発見の法理」の廃止と母なる大地への配慮も要請された。なお、合成生物学と自然保全との関わりについては審議継続とされた。

気候変動に関しては、IUCNの既存の6専門委員会に加えて「気候変動専門委員会」が設置された。そのほか、深海底鉱物開発の停止、金融制度の転換、生産・消費による環境負荷の半減も要請された。

以上の結果と決意を広く伝えるための要約版として「マルセイユ・マニフェスト」が発出され、自然の価値を認識し、自然を保護し、自然へ投資するというような根本的変革と、そのための協力・協同・地元に根差した行動が呼び掛けられた。

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