環境条約シリーズ 355気候変動ロンドン閣僚会合

2021年10月15日グローバルネット2021年10月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

国連気候変動枠組条約の第26回締約国会議(COP26)は2020年11月に英国グラスゴーで開催される予定であったが、コロナ禍のため21年10月31日~11月12日に延期された。それに備えて英国主催の閣僚会合(一部はオンライン参加)が21年7月25~26日にロンドンにおいて開かれた。そこでは、適応、1.5℃目標、損失・損害、パリ協定第6条(市場メカニズム)、資金など、COP26の主要議題が取り上げられ、以下のような議長サマリーが発出された。

適応については、その政治レベルでの認識向上とともに、適応の世界目標に向けた行程表および適応資金の包括的改善計画をCOP26において確実に作成するための事務レベル作業の促進を要請した。

1.5℃目標については、それに整合した野心的なNDC(各国が決定する貢献=削減目標)および2050年純排出ゼロに向けた長期戦略をCOP26前に提出するようすべての締約国に求めるとともに、先進国とG20構成国が負っている特別な責任にも言及した。また、石炭火力とそれへの支援の段階的削減も求めた。

気候変動の悪影響に伴う損失・損害については、世界各国で急増している異常気象に照らして対応行動の必要性を指摘し、サンティアゴ・ネットワーク(損失・損害に取り組む組織から成る)およびワルシャワ国際メカニズム(本誌2014年2月、16年2月)に基づく行動と施策管理の改善を求めた。

パリ協定第6条については、その主要論点(二重加算の回避、2020年以前の削減量の取り扱い、適応活動の支援)に関して見解の相違が目立ったため、総合的観点から妥協点を探るために非公式閣僚協議の継続を要請した。また、パリ協定実施指針の完成に向けた非公式協議も行うよう求めた。

資金については、その緊急拡充に向けて、2025年以降の新しい資金目標をCOP26において設定することの重要性を確認するとともに、年間1,000億ドル目標が未達成のため、先進国に対して2025年までの間の目標達成の方法について検討するよう求めた。

タグ:, ,