環境ジャーナリストの会のページ脱プラごみ行動をクリエイティブに 新装開店「量り売り」のお店体験記

2021年10月15日グローバルネット2021年10月号

腰塚 安菜(ライター/博報堂)

「重要なのは『脱プラ』ではなく『脱プラごみ化』」。東京のFMラジオ局の番組で、このフレーズが気になった。この日のゲストはプラスチック問題に詳しい金子達雄教授(北陸先端科学技術大学院大学)。聞き手は、7月31日に京都に日本初のごみの出ないゼロ・ウェイスト・スーパーマーケット「斗々屋京都本店」をオープンした株式会社斗々屋の広報も務めるノイハウス萌菜さんだ。

斗々屋は、「『地球一個分の暮らし』を実現するための『モノ』と『コト』を提案すること」をミッションに、「ごみが一切出ない量り売り」を事業の柱にしている。扱う商品は基本的に「ゼロ・ウェイスト」「オーガニック」「フェアトレード」の三つをキーワードとし、環境・人権配慮がベースにある、という。

さらに、「地域との結び付きは必要不可欠」であること、「量り売りにもいろいろな形(地域性)があっていい」ということを実現させたのが、「斗々屋京都本店」だ。早速自分でも京都で確かめてきた。

 

斗々屋京都本店での私の「量り売り」体験

持参の容器に、自分の買いたい量と値段がプリントされたシールを貼り付けて会計へ。空き瓶などの容器を忘れたらデポジット制のレンタルや店舗お薦めシリコン容器の購入もできる。

商品のそばに備え付けられたボタンを押すと商品情報がはかりに送られる、という最新のテクノロジーも取り入れられた購入フロー。

初めての体験で不慣れなため、「これはどう買ったらいい?」と質問を連発。丁寧にガイダンスしてくれるスタッフに従い、徳島・鳴門産の塩蔵生わかめ、地元京都の富士酢醸造元、飯尾醸造の「ピクル酢」、量り売りのラインナップとしては目新しい大粒の「柿の種」などを買った。

量り売り体験ができたうれしさに加え、お値打ち価格(例えば塩蔵生わかめは酢の物4食分で148円)で必要な分だけ買える点も気に入った。

驚いたのは、納豆も量り売りされていたことだ。中身に薄いビニールシートを乗せた小分けパックではなく「持参容器で、欲しい分だけ買う」スタイル。粘り気のある商品だけに苦労したというが、「京納豆」などを扱う地元の老舗食品企業の社長と「寒天流し」の型を使うことで試作を繰り返し、実現させたという。これは、次回ぜひ試してみたい。

お酢も瓶で量り売り。
注ぐ技量は問われたが、なかなか楽しい体験。

 

「脱プラごみ」 アイデア次第で可能性拡大!

「量り売り」やマイバッグなど、生活者が使い捨てプラスチック使用の手段を代替する買い物の場は広がりを見せているが、事業者も生活者ももうひと工夫できることがあるとすれば、新しい商品を考案したり、生活上のアイデアを増強させることかもしれない。

冒頭で紹介した「脱プラ」を「脱プラごみ化」する行動へと進ませる上でカギとなるのは、創意工夫(クリエイティビティ)なのではないだろうか。 納豆の量り売りの誕生秘話を聴きながら、アイデアさえ出せば、量り売りできる商品は増えていくように感じた。

同時に、いつものスーパーマーケットの売り場で、「これは不要なプラスチック包装なのではないか」「こうすれば、もっとプラスチックごみを減らせるのではないか」と、消費者がアイデアを出していくことも大事だと思う。

身近な場所には選択肢がまだまだ限られているが、こうした「量り売りのお店」が近所に開店した際には、ぜひとも体験してみてほしい。

詳細は日本環境ジャーナリストの会のwebサイトをご覧ください。

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