NSCニュース No. 133(2021年9月)定例勉強会報告「ビジネスと人権~日本の行動計画とアジアの状況~」
2021年09月15日グローバルネット2021年9月号
NSC共同代表幹事
サステナビリティ日本フォーラム代表理事
後藤 敏彦(ごとう としひこ)
昨年10月にビジネスと人権に関するNAP(国別行動計画)が公表されたが、世界からは周回遅れの感がある。さらに、コロナ禍の中で世界ではさまざまな人権問題が噴出しており、企業にとってはwith/postコロナ時代の重要課題になりつつある。今回は全般状況を簡単に解説した後、アジアの状況を中心に幅広く人権問題に詳しい、ことのは総合法律事務所の佐藤暁子弁護士にお話しいただいた。
ビジネスと人権に関する日本の状況
筆者が総論として簡単に解説したが、本誌2020年11月号の解説内容をほぼ踏襲したので参照いただきたい。
ビジネスと人権 ~概要とアジアの状況
1. 導入として
「世界の人権課題と企業の責任 ~サプライチェーン上の人権侵害に対する非難の高まり」ということで綿花、漁業、パーム油等々の紹介。
人権に関して上記総論をさらに詳しく、国連ビジネスと人権に関する指導原則の内容、国際人権基準、人権デューディリジェンスと継続的取り組み、人権に関するグローバルでの議論の進展等々を解説。
2. アジア各国の対応として表1についてそれぞれ詳しく解説
大きな流れとして、従前からの「低賃金労働」ではなく、「国際基準の人権保護」が前面に来ているということである。また、われわれの食卓や衣料に直結しており無関係ではないことの解説。こうした状況について企業もまったく無関心ではなく、さまざまな活動がある。
- ・多国籍企業65社の共同声明。デンソー等も参加。
- ・個別企業の対応として、アディダス、フェイスブック等
- ・日本企業の取り組みとして、ANA、アサヒグループ、りそなアセットマネジメント等の紹介。
3. 取り組みの背景状況
- ・投資家の関心の高まり。人権が直面する課題となったことが背景にあり。
- ・そのための評価機関等の活動の紹介。ICT、食料・飲料業界を例に。総じて日本企業の評価は低い。
そのまとめとして表2が示された。
4. 締めくくりとして
- ・人権取り組みのポイント、グリーバンスの意義
- ・SDGsとの関係—SDGsウォッシュを避けるために
- ・表3のような企業への期待と、共創による社会構築に向けた人権の取り組み、で締めくくられた。
講演後の質疑応答。必ずしも、紛争に至っているわけではないが、さまざまな課題が現実になりつつあることが想像される質問で、やはり人権取り組みは急務となってきていることが伺われた。