フロント/話題と人朏 昌汰さん、中安 祐太さん、宮川 卓士さん(合同会社 百(もも))
2021年06月15日グローバルネット2021年6月号
新・百姓! ~里山発!持続可能で最先端のライフスタイルを目指して~
会社名の由来の一つ、「百姓」(「物事を包括的に捉え、生きるための様々なスキルを身に付けたオールラウンダー」)。そんな現代版の「新・百姓」により今年11月、環境にやさしい暮らしを体験できる宿「EcoModation(エコモデーション)」が、宮城県川崎町に開業する。「環境にやさしい(Eco)」と「宿泊施設(Accommodation)」を合わせた造語だ。今年4~5月に建設・運営費用の一部を求めて行ったクラウドファンディングでは、構想に賛同する176人から約340万円の支援を集めた。この施設を皮切りに、2025年には小規模なエコビレッジ「百の里」も完成させる予定だ。
百が目指すのは、「ベーシックインフラ」(生活に最低限必要な食料とエネルギー)の地域内自給だ。日本人の消費支出の約3分の1を占める食料とエネルギー。この二つを地域で100%自給することで、その分の労働時間を減らし、火力発電や食料・燃料輸送にかかる二酸化炭素の排出を減らせる、というわけだ。
そのために、百は科学技術の利用を重視する。その理由は「現代の人でもまねしやすい」から(朏さん)。本業は工学研究者の中安さんも「百では現代的な職業を肯定します」ときっぱり。都市の人でもやりたい仕事をしながら食料とエネルギーを自給するために、エコモデーション開業当初は太陽光発電と薪ボイラーを利用。ゆくゆくは、メタン発酵や小水力発電といった地域の資源を生かせる技術を導入し、電気と熱の自給を実現する予定だ。
2017年、朏さんと中安さんがニュージーランド留学中に出会い意気投合。帰国後そろって川崎町に移住した。仙台で中安さんと知り合った宮川さんも翌年に移住、三人で百を結成した。以来、エコモデーション実現までの3年余り、平日はそれぞれの仕事、土日に山仕事や畑仕事を行うという、忙しい生活を送ってきた。そんな日々でも「けんかはしたことない」というほど仲が良い三人組。クラウドファンディングの成功理由を尋ねると「僕たちが楽しそうにしているから」と口をそろえる。「環境問題を解決するには、自分たちが変わるだけでなく、自分たちのアクションを見た人が『楽しそうだな』と思って動いてもらえるといい」(朏さん)との言葉通り、百のプロセスがこれからどう広がり人びとを動かしていくのか、注目だ。(鈴)