環境の本●アブラヤシ農園問題の研究Ⅰ、Ⅱ
●マーティンの鵜の目鷹の目~世界の消費者運動の旅から

2021年05月17日グローバルネット2021年5月号

アブラヤシ農園問題の研究Ⅰ【グローバル編】
アブラヤシ農園問題の研究Ⅱ【ローカル編】

編著●林田秀樹

東南アジアで急拡大したアブラヤシ農園の実像と課題について、学際的な視点からの解明を目指し8年間続いた「アブラヤシ研究会」の総括としてまとめられた。Ⅰグローバル編では農園拡大の歴史的経緯、産業発展の様相、開発をめぐる問題やパーム油利用の広がりについて、Ⅱローカル編では生産地における地域社会への影響が、多様な研究者による地域に根差した研究の成果としてまとめられている。小規模農民や地域住民、労働者の視点から実態の見えにくい現地の状況を論じ、アブラヤシや東南アジアの森林開発についての理解を深められる。一方でインドネシアの事例に偏り、生産量第2位かつパーム油産業のけん引役であるマレーシアの例や、移住労働者の人権問題が十分取り上げられていないことはやや残念であった。(晃洋書房、各巻3,800円+税)


マーティンの鵜の目鷹の目 ~世界の消費者運動の旅から

著●マーティン・J・フリッド

著者はスウェーデンに生まれ、ヨーロッパの消費者運動に関わった後、18年前から日本に定住し、日本消費者連盟の運営委員として国際委員会で活躍している。本書はこれまで熱心に国内外へ消費者問題について情報発信を積み重ねてきた著者の、消費者の立場に立ったエッセー。

農薬や食品添加物、エネルギーなど、普段なかなか気付けないが、消費者が知っておくべき身近な問題を、コンパクトな文章で気付かせてくれる。

ユーモアを交えた喜怒哀楽豊かな表現と、深刻な問題を大真面目に語り掛けるというコントラストも面白い、読み手の心を動かす一冊。(日本消費者連盟、1,300円+税)

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