環境の本●気候危機とコロナ禍~緑の復興から脱炭素社会へ
●誰のための熱帯林保全か~現場から考えるこれからの「熱帯林ガバナンス」
2021年04月15日グローバルネット2021年4月号
気候危機とコロナ禍 ~緑の復興から脱炭素社会へ
著●松下 和夫
筆者は環境庁(当時)に入庁後、国連地球サミット事務局の上級環境計画官などを歴任し、京都大学に転じてからは地球環境政策を広い視野から提唱している研究者。社会的共通資本の概念を提唱した故・宇沢弘文東大名誉教授の愛弟子として、同教授の「比例的炭素税と大気安定化国際基金」の今日的な意義についても紹介している。
本書は、コロナ後の経済復興について、グリーンリカバリー(緑の復興)、ビルドバッグ・ベター(より良い復興)が国際的に進められているとして、EUをはじめ中国、韓国の取り組みも紹介。「新型コロナウイルス感染症と気候危機は人類の生存に関わる問題で、コロナ禍から脱炭素で持続可能な社会への速やかな移行を進めることが日本と世界が目指すべき方向」と結んでいる。(文化科学高等研究院出版局、1,300円+税)
誰のための熱帯林保全か ~現場から考えるこれからの「熱帯林ガバナンス」
編●笹岡 正俊、藤原 敬大
本書はインドネシアを対象に、現場に生きる人びとの視点から、熱帯林の開発と保全の現場の実情を明らかにし、今後の熱帯林ガバナンスの在り方を示すことを試みている。熱帯林産品である紙やパーム油の生産現場で起きている環境社会問題の解決に向けて、持続可能性への配慮をうたう企業活動や製品が登場しているが、現場では相変わらず多くの問題が起きている事例が紹介されている。
本書は、熱帯林の持続可能な森林管理に関心を持つ研究者とNGOスタッフが集まる研究会の議論から生まれた。当フォーラムのスタッフも第5章を執筆、森林伐採現場での紛争解決や回避のためのあり方を論じている。(新泉社、2,500円+税)