環境条約シリーズ 349IUU漁業防止のための国内法
2021年04月15日グローバルネット2021年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
IUU(違法・無報告・無規制)漁業については、世界各地で水産資源の衰退や海洋生態系への被害が懸念されており(本誌2016年8月号)、その防止のための漁業規制、流通規制および輸出入規制を取ることが関係国に対して求められている。
日本においても、アワビなどの組織的な密漁やその他の水産物の違法な乱獲が、適正に操業している漁業者に対して、また、水産業における持続可能性の確保に対して悪影響を及ぼしていることが指摘されている。他方で、国際的観点からは、IUU漁業由来の漁獲物の流入防止のための国内法措置を欧米諸国は取っているため、水産物輸入量の多い日本にも同様の措置を取ることが求められている。
それに応えて、2020年12月に水産流通適正化法が制定され、公布された(法律第79号)。それは、第一に、国内で違法に採捕された水産物の流通を防止するために、違法・過剰な採捕のおそれの大きい水産動植物(特定第1種)については、その取扱事業者(採捕・譲渡事業者、一次買受業者、流通業者、加工業者)に対して、届け出義務とともに、当該漁獲物の名称および漁獲番号などの情報を事業者間で伝達する義務を定めている。
また、当該漁獲物の譲受・譲渡の際は、その名称、重量または数量、年月日、相手方の氏名、漁獲番号などの事項に関する取引記録を作成し保存することも義務付けられている。そのほか、当該漁獲物の輸出にあたっては、農林水産大臣による適法漁獲証明書が添付されていなければならない。
第二に、IUU漁業に由来する漁獲物が国内に流入することを防止するために、外国において違法採捕のおそれの大きい水産動植物(特定第2種)の輸入には、外国政府機関による適法漁獲証明書の添付が義務付けられている。
なお、施行は公布後2年以内と定められている。それまでに、上記の伝達や記録の電子化を含め各事業者への省力化支援措置を整える必要がある。