環境条約シリーズ 347無形文化遺産追加登録 伝統建築技術
2021年02月15日グローバルネット2021年2月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
2020年12月にオンライン形式で、無形文化遺産保護条約(本誌2019年3月、09年12月)の第15回政府間委員会が開かれた。そこでは、同年11月に開かれた評価機関(専門家6名とNGO 6団体で構成)による個別勧告に基づいて、締約国からの以下の諸提案が審査された。具体的には、代表的一覧表への記載提案42件のうち29件、緊急保護一覧表への記載提案4件のうち3件、また、最良保護活動一覧表への登録提案4件のうち3件が承認され、これらの一覧表に記載されている全体数は、131ヵ国、584件になった。なお、国際援助要請の2件については、どちらも情報照会扱いとされ再提案が求められた。
今回、代表的一覧表への記載が決定されたものの中には、日本提案の「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が含まれている。それは、文化財保護法の下の選定保存技術のうち、以下の17の技術(それを支える14の認定保存団体)である。
- 建造物修理:文化財建造物保存技術協会
- 建造物木工:日本伝統建築技術保存会
- 檜皮葺・杮葺:全国社寺等屋根工事技術保存会
- 茅葺:全国社寺等屋根工事技術保存会
- 檜皮採取:全国社寺等屋根工事技術保存会
- 屋根板製作:全国社寺等屋根工事技術保存会
- 茅採取:日本茅葺き文化協会
- 建造物装飾:社寺建造物美術保存技術協会
- 建造物彩色:日光社寺文化財保存会
- 建造物漆塗:日光社寺文化財保存会
- 屋根瓦葺(本瓦葺):日本伝統瓦技術保存会
- 左官(日本壁):全国文化財壁技術保存会
- 建具製作:全国伝統建具技術保存会
- 畳製作:文化財畳保存会
- 装こう修理技術:国宝修理装こう師連盟
- 日本産漆生産・精製:日本文化財漆協会・日本うるし掻き技術保存会
- 縁付金箔製造:金沢金箔伝統技術保存会
この日本提案に対しては、木造建築の長期保全の基礎技能、周期的な保存修理に備えた自然素材の採取・再利用、当初の部材と改修交換した部材との調和、有形遺産と無形遺産のつながり、伝統の受け継ぎと創意工夫の積み重ね、徒弟制度に代わる保存団体の結成とその支援、持続可能な開発の実践、地元共同体の主体的な参画・協働などの点で高い評価が与えられた。