環境の本 危機の向こうの希望 ~「環境立国」の過去、現在、そして未来
2020年12月15日グローバルネット2020年12月号
危機の向こうの希望 ~「環境立国」の過去、現在、そして未来
著●加藤 三郎
筆者は1966年に厚生省(環境衛生局公害課)に入省、93年に環境庁・地球環境部長を退官して「環境文明研究所」を設立。霞が関時代は戦後、公害列島などと呼ばれた日本列島の公害行政の柱となる公害対策基本法の策定、地球環境問題が顕在化してからは、スウェーデンのストックホルムで開かれた国連人間環境会議、ブラジル・リオで開かれた地球サミットにも出席し、環境行政に精通した官僚として活躍した。環境NPOの代表に身を置いてからは「地球の環境危機は、文明の在り方を見直さなければ回避できない」と、環境を最優先する環境文明の在り方を求め続けてきた。
まだ途は、ある
現役の地球環境部長を突然辞め、既存の環境団体は触れたがらなかった現代文明の見直しに真っ向から挑んだ筆者の行動に多くの人が驚嘆した。温厚な人柄で周囲から「サブちゃん」と親しまれているが、舌鋒は鋭く、環境文明を目指す決意には並々ならぬものを感じさせる。
日本の環境NPOではどこも取り組んでいない、憲法に「環境権」を取り入れる提案を行った。世界ではフランス、ドイツをはじめ23ヵ国で憲法に環境条項があるそうだが、筆者らが策定した「持続可能な社会に生存する権利」を明記した憲法前文の案は必読に値する。
本書は、筆者ならではの、筆者でしか書けない環境のバイブル。50年以上の環境分野での活動を「率直に正直に書いてみた」という筆者は「気候の危機やコロナ危機など先が見えない社会の行く末に関心を寄せ、不安を抱えながらも一筋の希望を求めている方々には、本書に目を通していただければ嬉しい」と記している。(プレジデント社、1,800円+税)