環境条約シリーズ 341感染症・保健衛生と自然環境条約

2020年08月18日グローバルネット2020年8月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

 本誌7月号で触れたように、ワンヘルス活動は、ボン条約(決議①10.02)、ラムサール条約(決議②11.12)、生物多様性条約(決定③12/16、12/21、13/6、④13/13、14/4、⑤SBSTTA/21/9)、欧州連合(規則⑥576/2013、⑦1143/2014)、ベルン条約(⑧外来種・外来病原体報告書)、世界保健機関(A/71/11)などに引き継がれ、感染症の防止策が提唱されている。

 そのうち②の附属書2は、

  1. 水・湿地生態系の変化・劣化
  2. 疾病対策における生態系管理の重要性
  3. 健全な湿地と健全な生態系
  4. 湿地による恵み
  5. 湿地による水質浄化
  6. 湿地による食料供給
  7. 湿地管理と人の健康
  8. 湿地生態系の撹乱による人の健康リスク
  9. 湿地の変化による人の精神衛生への影響
  10. 人の健康と湿地生態系の相互補完的管理
  11. 分野横断的な政策関与
  12. 湿地管理者による健康分野の手法の活用

という項目ごとに基本認識と対応を記している。なお、その附属書3には湿地疾病手引き・指針が定められている。

 また、⑤は次のような概略の項目から成る手引きである。

  1. A.ワンヘルスの概要
  2. B.手引きの目的
  3. C.指針原則(a.健康と福祉の全側面の考慮、b.計画的防止体制、c.生態系アプローチの適用、d.参加および包摂、e.分野横断・国際・学際、f.多スケール、g.社会正義と男女平等)
  4. D.ワンヘルスのための措置(1.条件整備、2.ワンヘルス施策・事業の評価、3.統合的な情報収集・監視、4.教育・能力構築・情報連絡、5.統合的な調査および知見の共同育成への支援)
  5. E.生物多様性とその健康とのつながりのワンヘルスへの統合(1.社会経済制度の多様性、2.生態的進化的過程、3.生物多様性の消失・生態系劣化・健康阻害の共通原因、4.生態系に基づく解決策)

 なお、③④⑦⑧は、外来種管理の観点から、移動の際の慎重な手続き、生態系撹乱の防止、野生生物感染症対策、感染拡大・人への伝播の防止、法令整備、ワンヘルス認識の向上などについて、①⑥は野生生物やペットの感染症対策について、それぞれ定めている。

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