フロント/話題と人丸川 照司さん
(株式会社Nature Innovation Group 代表取締役)

2020年08月18日グローバルネット2020年8月号

「アイカサ」を雨のインフラに
~傘で社会と暮らしを変えるイノベーションを狙う~

丸川 照司(まるかわ しょうじ)さん
(株)Nature Innovation Group 代表取締役

突然の雨に見舞われたらレンタル傘で快適に―― そんな傘のシェアリングサービス「アイカサ」。スマホでアプリをダウンロードすれば、駅やコンビニなどに設置された傘立て「アイカサスポット」でQRコードを使って開錠し、傘が利用できるという仕組みだ。現在スポットは東京、福岡を中心に約700ヵ所、6月からは神戸と名古屋でも導入がスタートし、登録者 は10万人に上る。レンタル料は1日70円、上限も 420円だからビニール傘を買うより安い。

このサービスを始めた丸川さんは現在25歳。日本の大学に入学後、社会起業家の本を読んで「社会問題を解決し、社会に影響を与えるような仕事がしたい」と考えるようになり、マレーシアの大学へ。しかし、自転車やタクシーなどのシェアリングサービスが生活に浸透しているのを目の当たりにし、「傘が借りられれば便利、日本でもビジネスにもなる」とその大学も中退し、2018年6月、友人らと起業した。

飛び込み営業で開拓した東京・渋谷の飲食店や映画館50ヵ所で導入を始めたサービスは、その後、街の交通インフラを担う大都市の私鉄・JRなどとも事業 提携を結ぶまでに拡大し、今や全国で1万5,000本の傘が稼働している。日本では年間約8,000万本のビニール傘が消費されているといわれ、その置き忘れや廃棄が問題になっているが、アイカサの傘は暴風にも強く壊れにくい素材を使い、修理もできる仕様に。繰り返し利用することから、プラスチックごみの削減や、温暖化の原因となる二酸化炭素の削減にもつながる。

「傘を持ち歩かない生活」が当たり前になるような便利な社会をつくりたい、と新たなライフスタイルの創出に挑む丸川さん。苦労も多いかと思いきや、「社会的意義を見出すことができれば企業は利害関係なく話を聞いてくれます」と朗らかに話す。7月末からは家庭日用品販売企業やリサイクル企業などとタッグを組み、食品保存用のビニール袋を回収・リサイクルした傘の導入もスタートし、「使い捨て傘ゼロ」も目指す。

「アイカサを社会にも環境にも優しい雨の日のインフラにしたい」。「傘」で人の暮らしを豊かに便利に変えるイノベーションを狙っている。(絵)

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