NSCニュース No. 125(2020年5月)環境省の新表彰制度「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」について
2020年05月15日グローバルネット2020年5月号
環境省 大臣官房経済課 課長補佐
菅生直美(すごう なおみ)
企業評価にESG(環境・社会・ガバナンス)の視点を取り入れるESG金融の流れが世界的に加速しています。環境省でも環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与える機関投資家、金融機関、仲介業者や企業等を含めた幅広い関係者を表彰し、広くその取り組みを社会に共有することで、ESG金融の普及・拡大につなげることを目的に「ESGファイナンス・アワード・ジャパン(以下、「本アワード」)」を2019年度に創設しました。本アワードは、取り組み主体ごとに五つの部門がありますが(図)、本稿では、資金の受け手である企業を対象とする「環境サステナブル企業部門」を中心に紹介します。
「評価軸と評価の視点」を取りまとめ
ESG投資への機運が高まる中で、環境省では、環境を中心としたESG投資の考え方がより実務的・実践的に広まるよう取り組みを行ってきました。その一つとして、環境要素が企業価値に与える影響を理解し、投資判断に組み込むことを普及させるとともに、環境要素を踏まえた経営を行い、その状況を開示していただくことを促進するために、2018年度の「環境サステナブル企業評価検討会」で「『環境サステナブル企業』についての評価軸と評価の視点」(以下、「評価軸と評価の視点」)を取りまとめました。
「評価軸と評価の視点」では、“「環境関連の重要な機会とリスク」を、「企業価値」向上に向け経営戦略に取り込み、企業価値にもつなげつつ環境への正の効果を生み出している企業”を「環境サステナブル企業」としています。本アワードの環境サステナブル企業部門では、この「評価軸と評価の視点」を参考にして作成した採点表で選考を行いました。
環境サステナブル企業部門では,応募企業は評価対象の内容が統合報告書等の投資家向けESG開示媒体のどこに記載しているかをエントリーシートで申告します。この申告に基づき、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI(重要業績評価指標)」「ガバナンス」の開示充実度や開示された取り組みが企業経営に統合され、当該企業が「環境サステナブル企業」であるために実効性を有しているかを2回の選考で評価しました。
最後に上位5社に対しては経営層インタビューを実施し、環境大臣賞(金賞・銀賞)が決まりました。
ESG経営のさらなる進展に向けて
環境サステナブル企業部門以外の部門でも、応募書類に基づく選考を経て、各賞の受賞者が決定しました(表)。
表彰式は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、一般の入場者を制限して、2020年2月26日に開催されました。各賞に対する表彰状授与のほか、環境大臣賞(金賞、銀賞)の受賞者による取り組み紹介や、各賞の選考を行った委員によるパネルディスカッションなどが行われました(表彰式の様子は、2020 年3 月25 日の日本経済新聞朝刊に掲載)。
ESGを企業経営に取り入れることが本流となる今、先駆的に取り組んでいる多くの企業の皆様に新設された本アワードへ応募いただきましたが、この流れを加速できるよう環境省としても引き続き取り組みを進めてまいります。
第2回の募集は、9月頃開始予定です。多くの御応募をお待ちしています。