環境条約シリーズ 334 制度整備が進められる沖合海洋保護区

2020年01月15日グローバルネット2020年1月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

生物多様性条約の下の愛知目標の11番は、2020年までに、生物多様性と生態系サービスにとってとくに重要な沿岸域・海域の少なくとも10%が、保護区域制度およびその他の保全措置区域制度であって、効果的・衡平に管理され、かつ、生態学的な代表地域を含み相互連携の図られている制度を通じて保全され、また、広域の土地・海洋空間計画に組み込まれることを求めている。このような海洋保護管理区域については海洋法条約も触れており、世界全体では国家管轄海域のおよそ16.8%に設定されている。

日本においては、海洋基本法の下の海洋基本計画は、海洋の持続可能な開発・利用と環境保全の統合的な推進、また、沖合域の保全を目的とした海洋保護区の設定の推進を記している。しかし、現在の海洋保護区は、管轄海域の8.3%(沿岸域の72.1%、沖合域の4.7%)に留まる。また、2016年に公表された「生物多様性の観点から重要度の高い海域」のうちの沖合海底域に対しても、海洋保護区は8.5%にすぎない。

それを受けて、2019年4月に自然環境保全法が改正され、「沖合海底自然環境保全地域」と、同地域内の「沖合海底特別地区」が創設された。前者においては特定行為(鉱物掘採・探査、海底動植物の採捕、自然環境に影響を及ぼすおそれのある行為)に、届け出が義務付けられている。後者においては、特定行為に許可取得が義務付けられている。個別の届け出または許可には、制限や条件が付けられることがある。届け出と許可に関する詳細規則は11月に公布された。

特定行為の実施状況の確認のため、船舶への立入り、聴取・検査が行われる。届け出もしくは許可またはその条件に違反した場合は、当該特定行為の中止が命ぜられる。外国漁船による違法なサンゴ採取などが行われていることもあり、外国船舶の担保金提供による釈放手続などを定める施行令が9月に公布された。

このように愛知目標の最終年(2020年)での達成に向けて制度整備と指定地の選定が進められており、その候補として小笠原の沖合域が想定されている。

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