フロント/話題と人カール-A.・フェヒナー氏(映画「気候戦士」監督)

2019年12月16日グローバルネット2019年12月号

草の根の人びとこそが気候変動を解決する力

カール・A・フェヒナーさん
(ドキュメンタリー映画「気候戦士」監督)

勇ましい名前の映画だが、中心に描かれているのは気候変動問題に真摯に取り組む、多くの草の根の人びと。一方で権力の中枢にいるトランプ米大統領とシュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事の気候変動対策への姿勢を対比させつつ、私たち一人ひとりには何ができるか、何をすべきかを考えさせる。

フェヒナーさんは、映画やドキュメンタリーを数多く手掛けるジャーナリストとして、人びとに「変化の実現可能性」を伝えたいと思ってきた。自然エネルギーの可能性を描いた前作「第四の革命」は、ドイツの脱原発の流れを作るきっかけにもなるなど大きな反響を得た。マスメディアは問題にフォーカスしがちだが、監督は、「解決方法を見せ、ポジティブな答えを示していきたい」。「気候戦士」ではそういった「チェンジメーカー」に光を当てた。

気候変動の問題は待った無しだが、人びとが自分たちと社会が「変わることができる」と信じることで、変化は起こせると考えている。日本社会では、声高に問題を伝える反対運動などは受け入れられにくい面もあるので、技術的、経済的に効果的な方法を通じた、調和的な解決方法の提案が社会に受け入れやすいかもしれない。その意味で、フェヒナーさんは今回来日試写会を行った千葉商科大学の「自然エネルギー100%大学」への取り組みについて、具体的・実践的で有効な解決方法の提示だと感じたという。

個人的に実践しているのは、太陽光発電付きのパッシブハウス(省エネ住宅)に住む、自家消費の3倍発電できる電力で電気自動車で移動、ドイツ国内では飛行機に乗らない、肉食をやめるの四つ。これらの実践を通じて気候変動問題の解決方法を示しながら、フェヒナーさん自身も快適に気分良く暮らすことができるという。

ドイツが脱原発を決め再生可能エネルギーの普及に踏み出すまでに40年以上かかったが、市民の力で変化を生み出すことができた。日本政府はまだ本格的なエネルギー転換の方向を示していないが、気候変動対策のために個人ができることはたくさんある。問題を解決する側になるか、問題を作り続ける側になるか、映画を通じて選択を呼び掛け続けている。(ぬ)

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