フロント/話題と人セオドア・メイヤーさん(INEB:社会に関わる仏教徒の国際ネットワーク)
2019年11月15日グローバルネット2019年11月号
「持続可能なアジアを創造するリーダーを育てたい」
若者向けの英語研修を運営
技術革新によって世界を駆け巡る膨大な情報、経済のグローバル化による目まぐるしい変化の中、私たちは少し先の社会の姿すらはっきりとは思い描けなくなっている。困難な時代を生きる若者をエンパワーするため、メイヤーさんは、現在、タイのバンコクに拠点を置くINEB研究所で、2016年に自らが立ち上げた「社会に関わるための英語研修(SENS)」を運営する。
研修では、英語を学びながら、気候変動などグローバルな課題に対し、ミャンマー、ラオス、タイ、ネパール、インドネシアといった国・地域から国境や宗教を超えて集まった参加者が知恵や共感を駆使し、若手リーダーとして成長することを目指している。気候変動以外にも、難民と移民、食料の安全保障といった課題について、フィールド調査や英語による討論を通し、その過程で、自分の周りで起こっている問題とグローバルな課題との接点を見出す。また、タイの在野のリーダーたちの話を聞き、あるべきリーダー像を理解してゆくという。研修後、参加者の多くは、人権・環境・都市問題などに取り組む活動で中心的な役割を担っている。
メイヤー氏自身はアメリカ合衆国の市民だが、宣教師の両親の元、インドで生まれ、人生の大半をアジアで過ごしている。10代で米国に戻って学生生活を送ったのはベトナム戦争の時代。社会が混乱する中、「異文化」である米国の暮らしへの同化に苦しみ、生活も荒れたというが、学びが彼を救う。手に取った本に感化され人類学を専門とし東南アジアに向かい、10年ほど、タイで社会変革を目指す仏教についての研究や執筆活動を行っていた。研究対象に感化され、INEBに参加。INEBを立ち上げたタイの著名な仏教社会活動家スラック・シワラック氏から、次世代のための教育プログラム立案を依頼され運営にも関わり現在に至る。今回はメコン河流域の環境社会問題に取り組む環境NGOメコン・ウォッチの招きで来日し、「日本の若者が研修に加わり、宗教・倫理的な価値観を社会において実現し、持続可能なアジアを創造するリーダーに育ってほしい」と訴えた。
(特定非営利活動法人メコン・ウォッチ事務局長 木口 由香)