特集/水Do!フォーラム2019 脱プラスチック、そしてその先へ英国の使い捨てプラスチック削減とRefillキャンペーン
2019年06月14日グローバルネット2019年6月号
City to Sea「Refill」プロジェクトマネージャー
ガス・ホイトさん
台所の議論から始まったCity to Seaの活動
City to Seaは2015年にできた団体です。プラスチックによる汚染を根本から止めることを目指し、人びとが楽しく取り組めるようなキャンペーンを展開してきました。
City to Seaの活動はもともと少人数のボランティアから始まりました。当時地元英国ブリストルのテレビキャスターだった創設者のナタリー・フィーは、太平洋のミッドウェー諸島で撮影された、お腹から色とりどりのプラスチックごみやペットボトルキャップが露出した状態のアホウドリの死骸の写真を見て衝撃を受け、自宅の台所に友人を呼び、自分たちで何かできないか、話し合ったのです。
そうして設立されたCity to Seaは、①地球にやさしく②前向きに活動し③時には勇気を持って動き④楽しんで活動し⑤創造力を発揮した活動をする、という五つの基本理念を掲げ、啓発活動だけではなく、自分たちを取り囲む世界を実際に変えていくための活動を展開しています。
「Refill」について
私たちは、マイボトルに給水し再利用することによってプラスチック汚染を止めるキャンペーン「Refill」を立ち上げました。
街にリフィルステーション(給水所)を設置し、簡単に、楽しんで水を手に入れることができるようカフェやレストランなどの既存のインフラを利用し、店舗の窓にステッカー(写真)を貼ってもらい、実際に買い物をするか否かに関わらず、水を無料で提供してもらいます。
調査の結果、来店者の50~67%が、もともと給水のために立ち寄ったものの、結局何か商品を購入した、ということが明らかになり、これは重要な金銭的インセンティブとなることがわかりました。
ブリストルでの活動から英国全体での取り組みへ
2015年にブリストル市が「欧州グリーン首都賞」を受賞したのを機会に、使い捨てプラスチックに関するブリストルの取り組みについて、公開ミーティングを開催しました。専門家や学会関係者、NGO、政治家などが一堂に会し、約3時間の議論によって、プラスチック製軸の綿棒、使い捨てプラスチック容器、雨水の排水管の三つの問題への取り組みを始め、綿棒のキャンペーンでは、英国国内で400tを超すプラスチック製軸の綿棒を減らすことができました。
また、2016年にアプリを開発しました。ユーザーはそのアプリを使って給水できる場所を探し、新たな給水先の情報を発信することもできます。
さらに、2017年10月には、英国の公共放送BBCが世界の海洋に関するドキュメンタリーシリーズ「ブループラネットⅡ」を放映し、海洋汚染の深刻さについて取り上げると、多くの人から海洋生物の保護を求める声が上がり、政治家もこの問題に取り組み始めました。
そこで私たちはロンドン市長との話し合いを始め、ロンドン動物学会(ZSL)などとパートナーシップを結び、「ロンドンを、世界初のペットボトルフリー都市にする」というビジョンを掲げた「#OneLessキャンペーン」を進めています。
意識が変わりつつある英国の市民と企業
「Refill」による調査の結果、85%もの人がプラスチックによる環境汚染を心配し、73%の人が自分が使うプラスチックの量を減らそうとしていることがわかりました。また、64%の人が、無料で給水できるならボトル入り飲料水を買うのをやめると回答し、公共空間に水飲み場が増えることを望んでいる人は78%にも上りました。
活動を始めた2015年に200ヵ所だったリフィル・ステーションの数は、2018年には1万6,000ヵ所に増えました。また、英国最大のカフェチェーンのCostaには2年かけて働き掛け、活動への参加が実現したのですが、わずか2ヵ月後にはスターバックスをはじめ他のチェーンも続々とそれに続いてくれました。
そして2018年9月に「全国リフィル・デー」を実施しました。SNSで3万件以上の「イイネ」を目標にしていたのですが、結果的には3,000万件も集まりました。
このように英国では人びとの意識は大きく変わっています。しかし、行動に移すというところまではまだギャップがあると思います。
シンプルな活動でシンプルな解決を~今後の課題
もともと台所での議論から始まったCity to Seaですが、今は23名の専従スタッフを抱え、資金を支援してもらい、政府からも後押ししてもらえる活動に成長しました。
今後は、活動をグローバルに広げ、国内では、すべの主要都市にRefillネットワークが完全に行きわたり、空港など交通機関のハブとなるような場所すべてに公共の水飲み場が設置されることを目標としています。
海洋プラスチック汚染は複雑な問題ですが、キャンペーンは非常にシンプルなものです。他にも課題はたくさんありますが、シンプルな活動で、シンプルな解決を実現することは可能だということを示していきたいと思っています。