環境条約シリーズ323「ポスト2020 目標」に向けた生物多様性条約のCOP14
2019年02月19日グローバルネット2019年2月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
2018年11月17日から29日まで、生物多様性条約の第14回締約国会議(COP14)およびカルタヘナ議定書の第9回締約国会合(MOP9)と名古屋議定書の第3回締約国会合(MOP3)が、シャルムエルシェイク(エジプト)で開催された。それに先立つ14・15日には閣僚級会合も開かれた。
COP14においては、「愛知目標」の次を担う「ポスト2020目標」をCOP15(2020年、中国)で採択するための段階的な検討手順が決定された。また、生物多様性の主流化にとっては、エネルギー、鉱業、社会基盤、製造業および加工業の各分野での実現が不可欠であることが強調された。その他、人の健康、気候変動、受粉昆虫、保護区以外の区域管理制度、海洋生態系、伝統的知識などに関する決定も採択された。
先進国と開発途上国とで意見対立のあった合成生物学および塩基配列情報(DSI)については合意ができず、以下の前提情報の収集をCOP15に向けてさらに続けることとされた。具体的には、合成生物学については、新規事項への該当性、包括的調査手法、ゲノム編集を含む関連技術の進展、最新の知見、カルタヘナ議定書に該当しない成果物などに関する情報である。また、DSIについては、「ポスト2020枠組み」での扱い方、定義・適用範囲と利用状況、関連国内措置の有無と内容、デジタル情報の追跡状況、能力構築の必要性、データベースの状況などに関する情報である。
MOP9においては、名古屋クアラルンプール補足議定書の批准促進や国際情報交換センターの活用が求められた。MOP3においては、名古屋議定書の批准、国内措置の策定、ABS国際情報交換センターへの必須情報の掲載などを促進することが要請された。世界利益配分基金については、二国間では対応できない事例の特定、その検証、特定事例への対応などに関する検討をMOP4に向けて続けることとされた。また、どちらのMOPにおいても、議定書の有効性評価と効果的な実施、能力構築を含む開発途上締約国への支援、国家報告の拡充などに関する決定が採択された。