環境条約シリーズ 322「持続可能な都市の未来のための湿地」をテーマにしたラムサール条約COP13

2019年01月18日グローバルネット2019年1月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

2018年10月21日から29日まで、ラムサール条約の第13回締約国会議(COP13)が、「持続可能な都市の未来のための湿地」をテーマとしてアラブ首長国連邦のドバイにおいて開催された。そこで、湿地の状況と湿地の生態系サービスに関する世界初の報告書であるGWO(世界湿地概観)が公表された。それによると、1970年以降、35%の湿地が消失し、その消失割合は森林消失の3倍に上り、81%の内陸湿地の生物種および36%の沿岸・海洋生物種が衰退している。

湿地の危機的な状況と同様に、ラムサール条約自体にも、実施面・組織面の危機が存在する。実際、登録地全体の69%は基礎情報・地図の提出・更新が行われておらず、また、生態系変化の観測・報告の体制も整備されていない。そのため、数年来、条約の実施確保が緊急課題とされ、確実な義務達成、条約の組織と管理体制の改革、財源確保などが求められている。

それを受けて、下部機関の廃止と新設の「効率化作業部会」による管理体制の見直し、科学技術評価委員会の作業改善、また、開発途上国の観測・評価作業の軽減と支援のための、生態系サービスの簡易評価、助言専門家派遣などに関する各決議が採択された。

他方で、COP12同様、気候変動パリ協定の資金メカニズムへの期待は強く(本誌2015年8月)、ブルーカーボン(沿岸および海洋生態系に貯蔵される炭素)生態系の再生・管理、泥炭地の登録基準、泥炭地の再生、都市・気候変動・湿地、先住民の文化と気候変動対策などに関する各決議が採択された。しかし、検討の過程では、気候変動メカニズムへ湿地を組み入れるという主張には、反対する見解も示された。

その他、生物多様性条約やSDGs(持続可能な開発目標)との連携強化、男女の役割、農業、潮間帯、ウミガメ生息地、北極地域、西アジア地域などに関する各決議が採択された。また、COP12で創設された認定湿地都市として、中国(6)、フランス(4)、韓国(4)、ハンガリー(1)、マダガスカル(1)、スリランカ(1)、チュニジア(1)の18都市が選ばれた。

タグ: