フロント/話題と人ウータン・森と生活を考える会  事務局長 石崎雄一郎さん

2018年12月17日グローバルネット2018年12月号

暮らしとつながる熱帯林を守る活動が30周年

石崎 雄一郎(いしざき ゆういちろう)さん
ウータン・森と生活を考える会事務局長

10数年前、大学卒業後に2年間の引きこもり生活を経て会社員になった頃、もともと関心のあった森林関係の集まりでウータン・森と生活を考える会(以下、ウータン)の当時の事務局長西岡良夫さんと出会った。ボルネオ島の山奥で一晩中、違法伐採された木材が搬入される様子を監視した話に感銘を受け、以来ウータンの活動に関わるようになり、2013年に事務局長に就任した。「ウータンの魅力は、やりたい人が集まって議論しながら自発的に行動しているところ」。現在のメンバーは約15人でその半分は2、30代。語学やITなど得意なことを生かせる形で参加してもらい、現地へのツアーにも参加することでその人の「やりたいことをできる場所」にウータンがなっていくと思っている。

1988年に大阪で設立されたNGOウータンは、90年代の原生林減少に歯止めをかける「日本の熱帯材使用削減キャンペーン」、2000年代の「ボルネオの絶滅危惧種の違法材ストップ企業キャンペーン」、2010年代から違法伐採で失われたインドネシア側の「タンジュン・プティン国立公園の森林再生」を中心に活動を展開し、今年、設立30周年を迎えた。近年はアブラヤシ農園開発や森林火災への対処、エコツアーや植林の実施など、現地のNGOや住民との連携が重みを増している。

石崎さんは、「企業の無謀なアブラヤシ農園開発に対してパーム油の認証団体に苦情申し立てなどをした結果、一部の開発停止など具体的な成果が出たときはうれしかった」とやりがいを語ってくれた。一方で2015年には森林火災で国立公園の4分の1が被災し、植林した木々が燃えてしまうなど現場での森林保全の難しさにも直面してきた。

東南アジアの熱帯林減少に対する危機感が日本社会で共有されない中、人も資金も限られたNGO活動のインパクトの弱さも感じている。「日本の消費生活がパーム油や木材を通じて熱帯林とつながっていることを感じ、考えてもらうためにはどうすれば良いか」を常に考え、「30年間で培った多くのNGOや専門家と協力・連携することで熱帯林の減少を止められるようなインパクトのある活動をしていきたい」と抱負を語る。

セミナーやイベントにはオランウータンのデザインのTシャツで参加する。38歳。 (ぬ)

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