特集/海洋ごみからプラごみ問題を考える~日本のリサイクル事情と脱プラスチックの動き脱使い捨てプラスチックの取り組みは進むのか

2018年10月16日グローバルネット2018年10月号

環境ジャーナリスト
服部 美佐子(はっとりみさこ)

利便性が高く経済活動を支えてきたプラスチックが今、転換を迫られている。プラスチックごみは埋立処分場のひっ迫や焼却によりダイオキシン類を発生する要因とされ、焼却施設に高額の公害防止装置を整備し、リサイクルの仕組みづくりに力を注いできたが、「対処療法」だけでは地球規模で深刻化するプラスチック問題を乗り切ることはできない。

1人当たりのプラスチックごみ排出量世界2位

「各国がまず正確なプラスチックごみの排出量を把握すべきでは?」。一般社団法人プラスチック循環利用協会はそう話す。海洋流出量が多いと推計されている中国やインドネシアなども参加する国際会議でも提起しているというが、反応は芳しくないという。

では日本はどうか。環境省の2013 年のデータでは排出量9,400万t のうち、リサイクル(材料、ケミカル)25%、熱回収(廃棄物発電、RPF/セメント燃料化、熱利用)57%で、残る18%(焼却10%、埋め立て8%)が未利用分。これをどう減らすかが今後の課題だ。周辺国にこうしたフロー図があれば技術支援が可能になる。

ところで熱回収は、欧州連合(EU)では「エネルギーリカバリー」と呼び「リサイクル」と区別される。だが、いずれも環境負荷低減・エネルギー消費削減の手法であり廃プラスチックの状態で使い分けており、熱回収をリサイクルより下に位置付けている日本とは異なる。今年6月のG7で日本は「海洋プラスチック憲章」の署名を見送り国内外で批判を浴びた。理由を「数値目標に係るものがあり国民生活や産業界への影響が大きく今回は精査できない」としているが、定義やバックグラウンドの擦り合わせが必要だろう。

問題は1人当たりのプラスチックごみ排出量がアメリカに次いで2番目に多いことだ。協会が毎年公表する調査データによれば、2016年度の廃プラスチック総排出量899万tのうち家庭や事業所ごみ由来が407万t、うち317万tが容器包装。実に8割近くを占める()。

図 一般系廃棄物(407万t)の分野別内訳
出典:2016年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(プラスチック循環利用協会発行)

中国の輸入禁止で浮き彫りになったリサイクル事情

解決のカギを握る使い捨て容器包装だが、中国が今年1月から生活由来の廃プラスチックの輸入を規制したことは記憶に新しい。年間約150万tの廃プラスチックの約7割を中国に輸出してきたが、わずか2,000tまで減少した。代わりに輸出量を増やした東南アジア各国でも中国と同様の法律ができれば早晩行き詰まるのは明らかだ。

ペットボトルも国外輸出問題が再三議論の俎上に載っている。家庭から排出されるペットボトルを「容器包装リサイクル法(容リ法)」にのっとってリサイクルする場合、市町村が回収したものは日本容器包装リサイクル協会(指定法人)が入札で選定したリサイクル業者に引き渡される。ところが廃ペットボトルの資源価値が上がり、落札価格が2006年度から有償に転じたため、回収や選別の費用負担に不満を抱く市町村は自ら業者を選んで売却できる「独自処理」に乗り換える一方、指定法人と契約する事業者は落札できない、処理能力に見合った量が確保できないと訴えた。

ちなみにペットボトルリサイクル推進協議会によれば、2016年度の販売量約60万tのうち市町村による分別収集量は年間約30万tで、指定法人への引き渡し量は約20万t。トレーサビリティーの問題も指摘されて家庭からは2万tにとどまったが、オフィスや飲食店など事業系廃ペットボトルを合わせ約30万tが国外に輸出されている。

環境省は中国の輸入禁止を受け「国内資源循環のためのリサイクル高度化設備の導入に対する国庫補助」として、事業者向けに施設整備費の2分の1を補助する15億円規模の予算措置を講じ、都道府県や政令市に対し市町村のプラスチックごみの不法投棄や保管状況、リサイクル設備の有無などを調べる緊急アンケートを行うなど対応に追われている。

急がれる使い捨てプラスチック容器包装の削減

こうした状況をよそに猛暑の今夏、手軽な熱中症対策としてペットボトル飲料が売り上げを伸ばし、ペットボトル入りのノンアルコールビールまで登場した。リサイクル率80%以上、回収率90%前後を自負する協議会も「(リサイクル施設が)オーバーフローになるのでは」と不安をのぞかせる。消費が伸びればその分処理能力が必要になり、回収し切れないごみも増える。まるでいたちごっこだ。国内循環の整備は急務だろうが、排出量そのものを削減すべきなのは言うまでもない。

そんな中、環境省は8月「プラスチック資源循環戦略」を検討する小委員会を立ち上げた。主な論点に使い捨てプラスチック容器包装の大幅削減、効率的なリサイクルの促進、バイオマスなど再生可能資源の利用促進、海洋流出を防ぐ国際協力などを提示している。

無料提供でなく、販売されているレジ袋、ストロー、箸・
スプーン(ロハスフェスタ東京にて)

この日複数の委員が「レジ袋有料化」に言及した。日本では地域やスーパーなど有料化はあくまで限定的だ。が、世界に目を転じれば欧州18ヵ国、アジアでも韓国や中国など4ヵ国が有料化しており、使用禁止などと合わせ国単位での規制は65ヵ国以上に上る。また海洋流出で問題のマイクロビーズも日本は業界の自主規制にとどまる。

しかし先の委員会を前に環境省が行ったアンケートで6割以上の消費者がレジ袋、フォーク・スプーン、弁当容器の中のカップなどは過剰と回答している。話題のストローにとどまらず官民挙げて脱使い捨てプラスチック容器包装に踏み込むべきだろう(写真)。

使用抑制の方策を取る一方でプラスチックに代わる素材の開発や普及も急がれる。代替プラスチックには有機資源由来の物質を含むバイオマスプラスチックと微生物の働きで分解する生分解性プラスチック、両者を兼備したバイオプラスチックがあるが、2017年の世界生産量は88万tと、プラスチックに占める割合は1%未満に過ぎない。価格の高さ、森林伐採などの環境影響、石油由来のプラスチックとの分別やリサイクル方法など課題も山積しているが、市場がなければ技術開発は進まない。新しいビジネスモデルの開発などにも積極的な支援が求められる。環境省は資源循環戦略を来年6月大阪で開催されるG20までにまとめる。使い捨てプラスチック容器世界ワースト2であることを肝に銘じ、実効性のある施策を期待したい。

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