環境条約シリーズ 319先進国・途上国の隔たりが目立ったAPA1-6
2018年10月16日グローバルネット2018年10月号
前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のパリ協定の実施指針は、UNFCCCの締約国会議(COP)の際に開かれるパリ協定締約国会合の第1回(CMA1)において採択されると定められている。しかし、パリ協定が、比較的早く2016年11月4日に発効したので、その直後のCOP22・CMA1では採択できなかった。
そのため、CMA1を延会にすること、第1回パリ協定特別作業部会(APA1)が実施指針の基本案を作成すること、遅くとも2018年のCOP24・CMA1-3において実施指針を採択することが合意された。それを受けてAPAは作業を重ねてきており、2018年4月末からドイツ・ボンで開かれたAPA1-5(本誌2018年7月)に続き、9月4日から9日までタイ・バンコクにおいてAPA1-6が開催された。
APA1-6では、GST(世界全体としてのパリ協定の実施状況の検討)については文章案が作成されるなど、12月のCMA1-3に向けてある程度の進展が見られた。しかし、CO2排出の歴史的責任をめぐる先進国と開発途上国との対立は、実施指針についても再燃しており、文章案まで至らなかった議題も多い。
衡平性については、先進国による全体論に対して開発途上国は二分論を唱えた。国別目標の範囲についても、先進国は共通の削減対策に関わる情報に絞るよう求めたが、開発途上国は削減とともに適応や資金・技術支援も含めるよう求めた。また、資金についても、パリ協定の範囲内での検討を主張する先進国と、資金額の予測可能性を高めるための強固な仕組みを主張する開発途上国との間の溝は埋まらなかった。さらに、議題によっては、小島しょ国やアフリカ諸国と、中国やインドのような新興経済国との間でも、立場や見解の隔たりが目立った。
最終的に、APA1-6および関連下部機関会合の議長団に対して文章案を含む全体のまとめノートを2018年10月中旬までに作成することが要請され、また、各議題項目と結論の掲載URLとを一覧表にした附属書「バンコクの成果」が提示された。