NSCニュース No. 115 2018年9月定例勉強会 報告「GCNJ/IGES 企業アンケートと SDGs コミュニケーションガイドについて」

2018年09月18日グローバルネット2018年9月号

サステナビリティ日本フォーラム
阪野 朋子(さかの ともこ)

2015年に持続可能な開発目標(SDGs)が採択されて丸3年弱。日本企業の中でもSDGsの認知度は高まっている。2017年度のCSRレポートからも、企業の取り組みが①17ゴールとこれまでの取り組みのひも付け②中長期的なこととの関連付け、の点で実体的なものになってきたと感じる。SDGsの前身のMDGs(ミレニアム開発目標)は、途上国が中心の取り組みであり、企業との連携はあまり話題にならなかった。先進国も巻き込むSDGsではまずまずのスタートではないか。

NSCが7月13日に都内で開いた定例勉強会では、日本企業のSDGsのこれまでの取り組みを概観し、SDGsが正しい理解の下で取り組まれることを手引きしたコミュニケーションガイドを共有した。

課題は中間管理職の理解度の低さ

地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能性ガバナンスセンター研究員の小野田真二氏からは、GCNJ/IGES 企業アンケート(2017年度)「未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から~」について講演があった。2016年、2017年の調査から、GCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)会員(254企業/団体)の取り組みの経年変化を概観するとともに、「SDGsの本業化」を実践するための考察が紹介された。前回指摘された、SDGsに対する経営層の認識と社会的な認知度の低さは改善が見られた。一方で、中間管理職のSDGsの認識が9%と低いままであった。経営トップのリーダーシップ、社内外での対話と多様な連携、企業理念に立ち返ることが本業化を進めるカギとの提唱がなされた。経営トップがイベントで講演する、外部の質問に応対するなどの具体例も示された。また、30企業/団体へのヒアリング調査の結果として紹介された事例はほとんど、1社だけでは成し得ない連携が必要であることを示していた。

「SDGsウォッシュ」にならないよう本質的な取り組みを

株式会社電通の法務マネジメント局CSR推進部長の木下浩二氏からは、「SDGs コミュニケーションガイド」について講演があった。広告コミュニケーションにおいて「企業の取り組みの実情とかけ離れた過度な表現」や「消費者に誤解を与えかねない不適切な表現」を使用することは、SDGsの理念から逸脱した行為として、批判の対象となり、企業価値を毀損させてしまう可能性がある。こうした状況を踏まえ、有識者や専門家8名による作成委員会が立ち上がり、SDGsを念頭に置いて行う広告宣伝やプロモーション活動に役立つ「理解しておくべきこと」「気をつけねばならないこと」などがまとめられた。電通では、2010年に「グリーンウォッシュガイド」を制作。これは一般には公表されていないが、社内では継続的に認識されており、そうした土台があったとのこと。

小手先だけのSDGsではやがてメッキが剥がれる。そのため「SDGsウォッシュ」にならないよう、中期的な経営計画の中にSDGsを盛り込むことなど、本質的かつ事業規模に応じた取り組みの必要性が提唱された。

経営そのものにつながるSDGs

講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、参加者から「野心的な中長期目標の具体的な企業事例を知りたい」「中小企業の力を生かしてSDGsを社会により浸透させるにはどうすればいいか」などの質問が出され、このテーマに対する関心の高さがうかがえた。

パネルディスカッションで話をする小野田氏(右)と木下氏

SDGsのビジネス上の最大の機会は、SDGs達成に向けて自社はどのような貢献ができるのかという経営そのものにつながることである。今後、事業部門への浸透も拡大することが想定される中、アンケートや手引きが生きることは間違いない。このテーマで定例勉強会が開催されたことは、タイムリーであったと感じる。約60名もの参加者も満足された様子であった。

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