環境条約シリーズ 316国連気候変動枠組条約準備会合
2018年07月13日グローバルネット2018年7月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
2018年4月30日から5月10日まで、ドイツのボンにおいて国連気候変動枠組条約のSB48・APA1-5(第48回補助機関会合・第1回パリ協定特別作業部会第5部)が開かれた。同条約の効果的実施に関わる課題とともに、本年12月の同条約COP24(第24回締約国会議)での採択を目指して、パリ協定の実施指針の草案作成も課題とされた。具体的には、土地利用・土地利用変化・林業、農業、定期的評価、国別報告書、国別適応計画、能力構築、事務局予算など、また、GST(世界全体としてのパリ協定の実施状況の検討)、各国の温室効果ガス削減目標、適応報告書、透明性枠組み、実施と遵守の促進、適応基金、市場メカニズム、資金状況、技術枠組みなどが議題とされた。
ところで、パリ協定における各国の削減目標は締約国の申告に基づいており、その引き上げが求められている。それに応えて、上記GSTと同様の評価検討を、長期目標の達成に関わる世界全体としての努力の状況と各国の温室効果ガス削減目標の状況についても活用し、そのための促進的対話を2018年に行うことが合意された(COP21決定1第20項)。しかし、具体的手順は示されていなかったため、COP23の議長国フィジーおよび太平洋地域における伝統的な問題解決方式であるタラノア方式が提唱された。それは、何が問題で、何を目標とし、どのように達成するかについて熟議する方式であり、タラノアとは包摂・参加・透明を意味している(COP23決定1附属書II)。
そのタラノア対話の準備会合がこの会期中に開かれ、締約国と非政府主体からおよそ300人が討議者となり、経験や意見を交換した。COP24では、準備会合の次の段階として政治会合が行われる。
全体の成果として最終日には、パリ協定の実施指針の項目を整理・統合し、異なる見解などを示した非公式ノートが作成され、また、次回会合までの作業手順を含む結論文書が採択された。技術的な検討や選択肢の整理は進められたが、作業は山積しているため、9月上旬にタイのバンコクで再開会合が開催される。