環境の本・極北へ
・種子が消えればあなたも消える―共有か独占か
2018年06月15日グローバルネット2018年6月号
極北へ
著●石川 直樹
2001年5月、チョモランマの登頂に成功し、7大陸最高峰登頂の最年少記録を更新した石川さんは、日本写真協会新人賞、土門拳賞などを受賞した写真家。また『最後の冒険家』では開高健ノンフィクション賞も受賞した文筆家でもある。
『極北へ』は20歳の時に初めて登ったアラスカのデナリ(マッキンリー山、2015年にデナリと改称)を18年ぶりに再登頂するまでの、極北の山々や人々との出会い、別れをつづった冒険記。今年、41歳になった石川さんの人生の出発点にもなったデナリとの再会が淡々と描かれている。
石川さんは本誌に2012年1月から2016年5月まで連載「風土から見えるもの~人の暮らしがつくる環境と文化」を23回にわたって執筆してくれた。最果ての地から送られてきた素晴らしい写真と文に、その都度感激させられたが、死とも直面するような旅先からよく忘れずに届けてくださったと、改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。(毎日新聞出版、1,600円+税)
種子が消えればあなたも消える ―共有か独占か
著●西川 芳昭
今年4月、米や麦、大豆の地域に合った優良な種子の生産と普及を国の役割と位置付けてきた「主要農作物種子法(種子法)」が廃止された。気の遠くなるような年月と農の営みの中で地域の特性や文化に合わせ改良されてきた種子。その公共財としての活用を支えてきた仕組みが農業の競争力強化政策の一環として企業に開かれ、同時に種子の多様性に対する公的支援が失われたことを意味する。
食料主権(食への権利)や農業、家庭菜園に至るまで、種子法廃止の影響の大きさに不安を覚えるが、筆者は、種子法廃止をすべての人に開かれた種子システムへの転換の機会とも捉えている。日々無意識に消費している種=食の由来と未来を見直す一冊。(コモンズ、1,800円+税)