特集/水Do!フォーラム2018報告 海ごみから考える脱使い捨てと水のエシカル消費発表2 みんなの問題 海ごみ
2018年05月15日グローバルネット2018年5月号
一般社団法人 JEAN
吉野 美子さん(よしの よしこ)
JEANは1990年、国際海岸クリーンアップ(ICC)に日本で初めて参加した有志によって設立され、海ごみ問題一筋に取り組んできました。データを活用してごみを元から減らす活動や、海洋ごみに関する情報の収集・発信のほか、国内外の関係者と一堂に会して認識を共有したり意見を交換する「海ごみサミット」も開催しています。
海のごみはどこから来るか? 何が問題なのか?
海のごみはどこから来ているのかというと、置き捨て、ポイ捨て、不法投棄のほか、船から捨てられたり海で使われていた物がごみとして流れてしまった物などもあります。しかし、実はその多くは町の中から出ているのです。ルール通りに出したのにカラスが散らかしてしまった家庭ごみや、劣化してボロボロになったカラーコーン、ちぎれてしまった人工芝、そういう物が雨や風で側溝に流れ、下水管などを通って川や水路を経て海に流れ込んでしまう。つまり、海のごみというのは海辺だけの問題ではないのです。
そして問題は、そのほとんどが分解せず、ずっとその場に残り、しかも毎日どんどん増えるということです。さらに、国を越えて流れて行く物もあるので、国際的な問題にもなっているのです。
さらに、プラスチックは石油から作られているので、有害化学物質が付着しやすい性質があり、海水中にあるごみやPCB(ポリ塩化ビフェニル)などを運ぶ仕事もしてしまっているのです。
海洋生物への被害
海ごみは海洋生物にも悪影響を与えます。魚ではなくペットボトルをくわえてしまったアザラシ、消化器官に大量のシート状のプラスチックの袋が詰まってお腹がガスで膨らんでいる状態で死んでしまったウミガメ、貝殻の代わりに割れた栄養ドリンクの口金を背負っているヤドカリ……。
生物に対する被害は2種類あり、誤飲・誤食、そして流れてくるごみに絡まってしまうことです。いずれにしてもプラスチックの場合は分解しないので、例えば絡まったら絡まったまま、飲んでしまったらそのまま消化しないでお腹の中にとどまり続けるのです。
コアホウドリの繁殖地として知られている北西ハワイ諸島のミッドウェー環礁は、人の立ち入りが非常に厳しく制限されているにもかかわらず、海からのごみは容赦なく島に入り込んでいます。レイサン島で見つかったひなの死骸のお腹の中からは大量のプラスチックごみが見つかりました。
このように、海のごみには国境がなく、アメリカ、カナダやアラスカなどの海岸には日本からのごみが流れ着いています。一方、沖縄や日本海沿岸などの地域には東アジアや東南アジアからと思われるごみが大量に流れ着いています。
また、マイクロプラスチックも最近は問題になっていて、食物連鎖の下の方にいる小さい生き物が口にしてしまいます。さらに台風や津波などによっていろいろな物が海に流れていきます。
海ごみ問題=プラスチック問題
世界ではプラスチックが年に約3億t生産されていて、その内の半分は使い捨てです。日本では、一人年間約75㎏のプラスチックを使っています(2012年統計)。レジ袋は年間300枚、ペットボトルは2日に1本使っている計算になります(2009年の生産量より)。
2016年の日本のICCの調査結果によると、回収量の多かったごみの第9位の飲料缶以外はすべてプラスチックです(図)。5位が川で拾われた飲料用のペットボトルで全体の7.1%、数にして1万3,739個ですが、硬質プラスチック、プラスチックシート、袋の破片、発泡スチロールの破片・かけら類を除くと、たばこの吸い殻・フィルターに次いで多いのがペットボトルになります。
私たちにできること
では、私たちにできることは何か。「今あるごみをどうするか」「これ以上ごみを増やさないためにどうするか」という二つのポイントに絞られます。
すでにあるごみは、拾えるうちはとにかく拾う、細かくならないうちにとにかく回収する、海に出て行ってしまわないうちに回収する。そうすれば、拾った分だけは取りあえず確実にきれいになります。そして、これ以上ごみを出さないため、物を買うときはごみになるときのことまで考えることが大切です。さらに、海のごみの多くは生活ごみであり、海から離れた場所に落ちているごみも、川を通って海に漂着する可能性があることを一人でも多くの人に伝えていってほしいと思います。