フロント/話題と人マーク・ゴーフさん
(自然資本連合 エグゼクティブ・ディレクター)

2018年05月15日グローバルネット2018年5月号

金融機関向けの補足書が発表された「自然資本プロトコル」
自然資本をどうビジネスに組み込むか

マーク・ゴーフさん

ゴーフさんが代表を務める自然資本連合(本部はイギリス・ロンドン)は、ビジネス、学界、NGO、金融機関などのさまざまな団体250 ほどが協働し、自然資本の課題について解決しようと活動している国際組織。2016 年7 月に「自然資本プロトコル」という枠組みを作った。「もともと企業が私たちの連合に参加したのは、事業リスクに対応するためであったが、今はビジネスチャンスを考えている。自然資本に関係する新しい規制が増加すると考えられるが、自然資本プロトコルを使うことで情報を体系的に集めて理解することが可能である」と説明する。

ゴーフさんは今年の4 月下旬、その補足文書となる、金融業界を対象とした「金融と自然資本をつなげる:自然資本プロトコルの補足書」を香港で発表するのに先立ち東京に立ち寄り、日本の金融機関などとの情報交換を行った。

「自然資本プロトコル」は、自然資本への直接的および間接的影響や依存度を特定、計測、価値評価し、ビジネス判断に組み込むための手順をまとめた文書。当初は衣料品と食料品を対象とした業界別の補足書が作られたが、このたび金融機関が果たす役割は大きいことから、金融機関向けの補足書もできた。金融機関が行う融資、投資、保険業務において、自然資本への影響と依存度を考慮する際に役立ち、補足書を利用することで、既存のさまざまなツールや取り組みのつながりを理解することができるという。

ゴーフさんは「ダイナミックに動く世界で、さまざまな国が台頭してきているが、日本には自然資本の分野で、取り組みを実施し、世界に変化をもたらし、世界をリードしていってもらいたい」と日本の金融機関への大きな期待を語ってくれた。

「プロトコル」の日本語版の公表は、他の言語に比べ最も早かった。また、ゴーフさんの来日中に開催されたシンポジウムにも多くの企業が参加し、このテーマに対する関心の高さが伺えた。情報収集だけに終わらず、プロトコルを実際に使ってみるパイロットプロジェクトへの参加など具体的な取り組みが進むよう、日本の金融機関の動きに注目したい。 (亜)

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