財団だより訃報 当財団会長 岡崎 洋
2018年04月16日グローバルネット2018年4月号
環境問題を考える基本は「思い遣りの心」
当財団会長 岡崎洋はかねてより病気療養中でしたが2018年3月31日に亡くなりました。86歳でした。
岡崎は大蔵省(当時)から1984年に環境庁(同)に転じ、退官後の1990年に当財団を設立しました。同庁の事務次官時代に、国立公害研究所(現・国立環境研究所)の近藤次郎所長と語らい、国際的にも高い評価を得ている同研究所の研究成果を内外にアピールするための公益団体を作ることで一致しました。
岡崎は、環境問題に深く関わってきたきっかけについて、大蔵省に入省した際(1954年)、時の事務次官から「水俣で大変なことが起きているようだ。大蔵省としてもきちっと調査する必要がある」と、熊本県・水俣で起きていた水俣病の調査に単身で行くように命じられたことを挙げています(2015年11月『グローバルネット』300号フロントより)。最悪の公害病である水俣病について「国が何らかの形で救済に踏み出さないといけない」と報告し、公害病に対する早期発見、対応、科学的証明、原因者責任の明確化、現場主義の大切さを痛感したそうです。
岡崎が事務次官在任中、日本政府の提案で国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)の最終会合が東京で開かれ「われら共有の未来」と題する報告書が発表されました(1987年)。岡崎は環境行政の基本には「思い遣りの心」が欠かせないと強調していましたが、その考えは、同委員会の座長を務め、後にノルウェー首相になるブルントラント女史との対話の中で、女史が地球的視野で考え、東南アジアの森林伐採にも思いを致すことに感銘を受けたからと述懐していました。
同委員会が打ち出した「持続可能な発展」、「将来世代のニーズを損なうことなく、現在世代のニーズを満たすこと」という概念は、今日の世界の環境政策の規範となっています。
(編集部)