環境条約シリーズ 313国際輸送動物保護条約

2018年04月16日グローバルネット2018年4月号

前・上智大学教授
 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

国際輸送中の動物の保護に関するヨーロッパ条約は、ヨーロッパ評議会(本誌1999年5月)によって1968年に採択されたが、2003年に全面改正され、2006年3月に発効した。この条約は、すべての脊椎動物の国際輸送に適用される。ただし、所有者が付き添う愛玩動物の商業目的ではない国際輸送には適用されない。愛玩動物とは主に犬と猫を想定しており、馬は該当しない。締約国は、条約規定を国内に適用し、定められた訓練計画を実行するとともに、領域内の輸送にも適用するよう努めなければならない。

基本原則として動物福祉の確保が定められており、輸送は遅滞を避けなければならない。また、留置は動物福祉または疾病規制の場合に限られ、ストライキの場合に必要な措置を取ることも定められている。

商業目的の輸送の場合は、輸送者の登録と権限ある当局による国際輸送認可証が必要である。輸送の手段・設備・備品は、動物の安全を確保できるように設計・維持・使用されなければならない。8時間を超える家畜(有蹄類)の輸送に際しては、輸送責任者は、輸送計画書を事前に作成し、輸送中に給餌・給水・休憩の時間と場所を記入しなければならない。また、積載前に、獣医による審査と適合する旨の証明書を受ける必要があり、輸送中は、適切な訓練または実務経験を有する動物福祉担当者が同行しなければならない。

その他、異なる種や年齢の動物の分離、おり、空間、床・敷きわら、つなぎ方、換気、温度、照明、水・餌・休憩、授乳中の雌、監視と手当、緊急事態の処置などに関する基準や条件が定められている。ちなみに、衛生または通関の目的で設備が封印されていても、確認や給餌・給水をしなければならない。さらに、鉄路、道路、水路、空路ごとの詳細規則も定められている。

近年、動物の国際輸送のほとんどは、受け入れ国での畜殺を目的としている。それに応えて、この条約は、以上のような当面の規制を定めているが、動物福祉の観点から、生肉のための国際輸送の制限および飼育国における畜殺を理想としている。

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