環境条約シリーズ 311国際商品協定の一つである国際コーヒー協定
2018年02月16日グローバルネット2018年2月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
コーヒーの国際取引については、国際商品協定の一つである国際コーヒー協定が対応してきている。2007年には、旧協定(2001年)を改正して新協定が採択されるとともに、旧協定の有効期間も延長された。
しかし、日本は、新協定を締結せず、有効期間が延長された旧協定への参加も2009年9月30日に終えた。ところが、2010年頃からコーヒーの国際価格に乱高下が見られたことに加えて、ロシア、中国、韓国などにおいてコーヒーの消費が拡大し、需給関係が逼迫してきた。また、新協定は2011年2月2日に発効した。そのため、コーヒーの安定的輸入の観点から、新協定を早期に締結する必要性が高まった。それを受けて、新協定は、2015年5月15日に国会承認され、7月23日に加入書が寄託されて同日から効力を生じた。
新協定は、コーヒーに関する情報交換、民間部門との協議、持続可能なコーヒー産業の発展、需給の均衡、貿易障壁の撤廃、食品安全、公正な価格の確保、生産者利益の増大、品質向上、技術移転、生産者支援などを目的としており、国際コーヒー機関の組織についても定めている。旧協定と比べて新協定では、能力構築や金融手段を含めて生産者支援が重視されている。
国際商品協定の特徴として、国際コーヒー機関における票決制度は、輸出国(44ヵ国)に1,000票、輸入国(7ヵ国)に1,000票という割当てに基づいており、決定には双方の70%以上の票を必要とする。各国は基礎票として5票を有し、残余の票は各国のコーヒーの輸出量または輸入量に比例して配分される。なお、輸入国は、日本、ノルウェー、ロシア、スイス、チュニジア、アメリカおよび欧州連合であり、欧州連合は単一の国として扱われる。
類似の国際商品協定は、ココア、砂糖、穀物、ジュート、天然ゴム、熱帯木材などに設定されており、持続可能性の確保のような環境面の配慮も課題とされている。また、いわゆるフェアトレードの対象とされている品目を扱うものもあり、遺伝資源分野における公正・衡平な利益配分の要求とも関連している。