シンポジウム報告気候変動によるリスク―私たちはどう立ち向かうか―(その2)<プレゼンテーション>高校生から見た環境問題

2017年12月15日グローバルネット2017年12月号

神奈川県立横浜国際高等学校2年生
石塚 紗弥乃(いしづか さやの)さん/内海 仁(うつみ じん)さん

 気候変動は、すでに存在しているリスクを増幅し、自然および人間システムにとって新たなリスクを引き起こし ています。さらに、貧困や、内戦などの暴力的紛争のリスクにも間接的に影響を与える可能性も指摘されています。  このような気候変動によるリスクについてのシンポジウム「気候変動によるリスク―私たちはどう立ち向かう か―」が9 月13 日に東京・千代田放送会館にて開催されました(主催: 環境省・外務省・国連広報センター)。  11月号に引き続き今月号では、気候変動と安全保障の問題についての基調講演と、パネルディスカッション登 壇者のプレゼンテーション内容の一部をご紹介します。

 

ボルネオ島・スタディツアーで自然保護の重要性を実感

私たちは今年8月末、学校が指定を受けているスーパーグローバルハイスクール(SGH)の活動の一環で、マレーシアのボルネオ島への環境問題をテーマにしたスタディツアーに参加しました。

サバ州の州都コタキナバルでは、アブラヤシプランテーションの会社を訪問し、パーム油やアブラヤシについての講義を受け、農園で実際にアブラヤシの実の収穫も体験しました(写真)。

(写真)重労働だったアブラヤシの実の収穫体験

国の野生生物局が運営するロッカウィ・ワイルドライフパークでは、プランテーション開発ですみかを追いやられ、野生に戻れなくなって保護されているボルネオゾウや、親を失ったオランウータンの赤ちゃんに会いました。また、JICAが保護活動を行っているマングローブ林を見学したり、東南アジア最高峰のキナバル山ではトレッキングをしたりして、熱帯雨林のさまざまな生き物に出会いました。

こんな素晴らしい生物が共存している森がプランテーション開発のために破壊されていると思うと、とても心が痛みました。そして自然を残したい、動物たちをこれ以上悲しませたくない、と強く思いました。

石塚さん:アブラヤシの実の収穫はとても重労働で、働いている現地の人のように上手に収穫することができませんでした。日本の私たちのもとにパーム油が届くまでには、そんな厳しい環境で働いている人たちの苦労があるということを実感しました。

内海さん:僕らは比較的裕福な日本でいかにぜいたくな暮らしができているか、それによってボルネオ島のような地域の人や動物、自然が犠牲になっている、と考え、彼らを守るために一人ひとりが行動を変えていくことが大切だと思いました。

事前学習から考え始めた「持続可能なパーム油の生産とは」

私たちはツアーの事前学習で、気候変動や地球温暖化の問題を追って世界各地で起こっている事象を取り上げたドキュメンタリー映画「地球が壊れる前に」を視聴しました。その中に、悪質な業者がインドネシアの森を焼き払ってアブラヤシ・プランテーションを拡大し、オランウータンなどかつては数多く森で生活していたはずの動物たちが行き場を失ってしまう、というシーンがありました。

では、ボルネオ島ではどうなのか。私たちは、ツアーでプランテーションを訪問した際、所長さんに「プランテーションは環境を破壊していると思いますか」と質問してみました。それに対し、社長さんは「私たちは昔からプランテーションとして使っている土地だけを利用しており、これ以上農園を拡大する予定はありません。マレーシアでは森を焼き払うことは法律で禁止されており、私たちはそのようなことは絶対にしません」と答えてくれました。しかし、中には法律を守らない業者はいて、さらに、違法に植えられたアブラヤシは政府に発見されてもそのまま放置するしかないのが現状だ、ということも教えてくれました。

ではプランテーションをなくせば良いのでしょうか。そうではありません。パーム油は食品だけでなく、化粧品や服などにも使われており、私たち人間の生活にとって今や必要な物となっています。

統計によると、パーム油の生産量は2004年に大豆油を超し、その後もどんどん増えており、今後増加する世界の人口に対してもその需要は減ることはないと考えられています。そのため、環境にもパーム油の需要にも配慮した持続可能なパーム油の生産方法を考える必要があります。

ツアーの事前学習で訪問したボルネオ保全トラスト・ジャパン(BCTJ)で、2004年に設立された持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)について教えてもらいました。RSPOは、手付かずの森や保護価値の高い地域にはアブラヤシを植えさせないよう活動しており、製造過程で厳しい審査基準を満たす商品だけに認証マークを与えています。

私たちは文化祭でこのRSPOの認証マークの付いた洗剤を100本販売することにしました。その商品は、売り上げの一部が販売製造元の企業を通じて、BCTJのボルネオ島での環境保全活動のために寄付されます。ですから私たちの売り上げの一部も、私たちが訪れたボルネオの森のために使われることになるのです。しかし実際には、その程度の寄付でボルネオの森や地球を守ることはできません。

高校生にできること地道な活動でも続けて世界の森を守りたい

私たちはツアーで現地の状況を実際に見てきて、ボルネオ島の現状を家族や知り合いに伝えようと思うようになりました。伝えることにより、その内容を知る人が少しずつ増え、環境に対する意識も高まってくると思います。

さらに、これまで以上に環境に配慮する生活を送るようになりました。家でのごみの分別に一層関心を持つようになり、海辺で花火をしたときはごみが海に流れないように注意する、というようなことにも目が向くようになりました。

さらに、消費行動が変わり、買う商品を吟味するようになりました。学校帰りに買い食いするとき、パーム油が含まれている商品を控えたり、商品を販売している企業のCSR活動を調べ、その活動に賛同すれば支援する気持ちでその商品を選んだりもするようになりました。

これらのことは実際は小さなことですが、決して無駄ではないと思います。これからもこのような地道な活動を続け、世界の森林を少しでも守っていきたいと思っています。

パネルディスカッションの様子。中央は発表する石塚さん、その右は内海さん

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