環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページ農水省 GAPのパートナー会でGAPの価値を共有

2017年10月16日グローバルネット2017年10月号

環境ジャーナリストの会準会員
田中 孝子(たなか たかこ)

農林水産省は9月5日、「GAPの価値を共有するフードチェーン連携パートナー会」の初会合を東京・霞が関で開いた。GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのことである。会合では、国際水準のGAP認証が必要となってきたことを踏まえ、生産者や食品関連業者などを対象にGAPの意義や取り組み事例を紹介し、意見交換を行った。会場は、東京オリンピック・パラリンピックを視野に200人を超える参加者で満席。関係者の熱気で包まれた。

求められる国際水準のGAP認証

農水省は、東京オリンピック・パラリンピックはあくまで契機とした上で、生産者だけでなくフードチェーン全体で持続可能性を目指す必要があるとGAPの意義などを説明して開会。

国際水準のGAP認証の必要性については、東京オリンピック・パラリンピックの調達基準を例に挙げ、参考として農産物では「JGAP(Advance)」「グローバルGAP」の2種と、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」(農水省が作成した通称「ガイドライン」。ガイドラインに準拠したGAPに基づき生産され、都道府県など公的機関による第三者の確認が続く)によるものが要件を満たすとした。

JAグループの取り組み

JA全農の立石幸一参事は、JA独自のTAC(Team for Agricultural Coordination)の活動がGAPの推進に貢献していることを紹介。TACは現在、264のJAで約1,800人が活動。10年にわたり8万戸以上の農家を訪問して声を聞き、農業指導を行ってきた実績がある。GAPについては、農業者の間ではまだ200項目ほどのチェックリストだろうといった認識があり、JA事務局がいかにGAPを支援する体制で取り組むかが決め手となると、JAトップのGAPの重要性についての理解と現場を支える仕組みの構築の必要性に言及した。

群馬県のJA利根沼田は、取引先からGAP認証を要請され、2010年JGAPの団体認証を取得した事例を紹介。13名で糸之瀬レタス部会を立ち上げ、JAの担当者がJGAPの指導員の資格を有していたことで、内部監査と指導が的確に行えたことから、団体での取得で費用が軽減できたことを説明した。

一方、滋賀県JAグリーン近江は、安土町旧老蘇農協の四つの営農集落で「GH評価制度」(GAP認証取得の教育システム)に取り組み、2017年、3年かけてグローバルGAP認証を取得した事例を紹介。発端は、営農集落をまとめ、法人化を進める中で、頼んだ作業者の労働災害補償などが課題となったことだったという。

また、332の経営体を四つにまとめたことで、米作176.5haすべてがグローバルGAPの認証米になったと効果を伝えた。推進については、JAのTACとして出向いた経験から、「チェックシートを渡すだけではなく、時間をかけて進めた」ことが功を奏したという。

JAの両担当者は、課題は「農産物の高付加価値化」であり、「価格への反映など取引先や消費者の理解をお願いしたい」と締めくくった。

意見交換 国際水準GAPを推進

意見交換では、農産物の輸出にGAPは必須か、GAPを取得した所としていない所の差異、認証費用の減額などについての意見や質問が出た。

農水省は県へのGAPの支援として、2018年度中にGAP指導員を現在の290人から1,000人以上に増やして育成し、2019年度末までに現在の3倍以上の認証取得を目指す計画で、今年度内にも本会合の第2回目を開く予定だ。

東京オリンピック・パラリンピックは選手村だけでも1日延べ4万6,000食の提供が見込まれる。GAP発祥の由来の一つに、農業による水系・土壌汚染などの環境問題があったことはあまり知られていないが、GAP認証取得への取り組みは進みそうだ。

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