フロント/話題と人堅達 京子さん(NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー)
2017年09月19日グローバルネット2017年9月号
環境問題を広く深く伝えるために より魅力的な番組を作っていきたい
NHKに入局以来、ドキュメンタリー番組一筋に歩んできたが、2007年にプロデューサーとして国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の議長を務めたインド人のパチャウリ氏へのインタビュー番組を制作したのをきっかけに、環境や気候変動の問題を取り上げた数々の番組を作り続けている。
堅達さんが番組作りに際して心掛けているのは、難しい問題でもなるべくわかりやすく届けること、かつ映像メディアとして視聴者の気持ちを引き付ける魅力を持たせることだ。今年7月17日の「海の日」にNHK総合で放送された「海洋アドベンチャー タラ号の大冒険2 太平洋横断 サンゴの危機を救え!」。フランスの海洋探査船タラ号の日本大使である北野武さんと人気俳優の西島秀俊さんをナビゲーターに、海洋酸性化やサンゴの白化など温暖化の海への影響について伝えた番組だ。出演者の発信力もあり、多くの視聴者の共感を呼んだ。
「環境問題に関心の薄い人たちにも見てもらえるような敷居の低い番組を作りたい。でもそのためには制作者側が問題についての理解を一層深めなければなりません。どこが枝葉で、どこが本質かを見極めなければ、わかりやすくできませんから。だから勉強は欠かせないんです」とさらなる意欲をのぞかせた。
今夏から日本環境ジャーナリストの会(1991年設立、会員約70名)の会長を務めることになった。映像メディアからの就任は初めて。新聞、雑誌、フリーランス、映像と、さまざまな伝え方を持つ、分野の違うメディアが集まる場を提供する同会は、喫緊の環境問題を自由に議論でき、その上で発信していくことができる場でもある。「環境問題の伝え方を一緒に考えていくというのはとても大事なことで、是非やりたいことの一つ。とくに世界のトレンドである持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動問題などは、ともに議論し学んでいくにはとても適したテーマ」だと言う。
「さまざまなメディアが垣根を越えて取り組むことで、今、日本が抱えている世界との環境意識の落差を少しでも埋め、伝え方をブラッシュアップしていく場にしていきたい」と抱負を語ってくれた。 (智)