NSCニュース No.107/2017年5月NSC 勉強会 報告(その2)

2017年05月15日グローバルネット2017年5月号

NSC 代表幹事、サステナビリティ日本フォーラム代表理事
後藤 敏彦

 

NSC主催「第3回 中長期のCO2排出量削減目標設定企業事例報告」を4月14日、地球環境パートナーシッププラザ(東京・渋谷区)のセミナースペースにて実施した。今回は、ソニー株式会社(以下、ソニー)品質・環境部の岩崎尚子氏とサントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)サステナビリティ戦略部長、内貴研二氏にご講演を願った。

3回シリーズの勉強会でわかったことは、どの企業も長期ビジョン・目標を立てたのは昨今ではなく、2010年頃より前に考えていたことである。各社とも1990年代から取り組みが進み、2005~10年に、これまでの取り組みを抜本的に改定する必要性を感じられたようである。

必ずしもトップダウンで検討されたわけではないが、他の多くの企業でみられるように、上層部で否決されることもなく決済され、トップのコミットメントとして社内に通知されている。創業理念などの企業のDNAという言葉が印象的であった。

【ソニー】

ソニーは2010年に「ソニーグループ環境ビジョン」を抜本的に改定し、環境計画「Road to Zero」を策定した(表1)。

表1 ソニーの環境計画「Road to Zero」とは

・「環境負荷ゼロ」を達成するための計画
・ マイルストーンとして、5 年ごとに中期目標を策定
・ 中期目標は、「6つのライフステージ」ごとに「4つの視点」で策定
・ 達成年(2050 年)からバックキャスティング(逆算)で決める

「6つのライフステージ」:
 商品企画・設計、オペレーション、調達、物流、回収・リサイクル、イノベーション
「4つの視点」:
 気候変動、資源、化学物質、生物多様性

 

岩崎氏からは、環境負荷ゼロについてのソニーの定義を決め、それをどのように達成していくか、そしてソニーの環境中期目標「 Green Management 2020」の概要について丁寧に解説していただき、その後「ソニーの環境技術事例」をいくつかご紹介いただいた。

個人的には、沖縄科学技術大学院大学と共同で実施中のオープンエネルギーシステムの実証実験が面白かった。

【サントリー】

「サントリーのオリジンは“水”」ということで、内貴氏は「水への思い」「社会への思い」「私たち自身への思い」ということを熱く語られた。

2010年に策定されたサントリーの環境ビジョン・目標は表2の通りである。1万2,000haの「天然水の森」の諸取り組みを詳細に、また、目標をどのように実現していくかを解説いただいた。

表2 サントリーの環境ビジョン・目標
  2020年 2050年
中期目標 長期ビジョン
自然環境の保全・再生

・「 天然水の森」の拡充
・ 自然保護の必要性が高い国での野鳥保護

自然保護の

グローバルトップランナー

環境負荷低減 主要国での
・水使用量削減
・CO2 排出量削減
グローバルでの環境負荷半減

各社の詳細はWEBサイトなどを参照されたい。

日本企業の全般的な流れとしては、2008年のリーマン・ショックまでは環境・CSRへの関心は相当高まっていたが、その後2011年の東日本大震災をはさんで急速に薄れていった、というのが筆者の個人的感触である。しかしながら、2015年の持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の採択以降、長期ビジョン・目標への関心、さらに2015年の世界最大の日本の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国連責任投資原則への署名などにより、ESG投資への関心が急速に高まり出してきている。

イノベーションを尊ぶ社風、創業家の存在、既存ビジネスモデルの陳腐化など、もろもろが絡まっていた長期ゴールを設定されていたが、いずれにせよ、トップのコミットメントが最も重要ということをを教えていただいた3回シリーズであった。

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