環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページNPOと記者はどう向き合うべきか、グリーン連合と初の意見交換会
2017年02月15日グローバルネット2017年2月号
フリージャーナリスト 滝川 徹
日本環境ジャーナリストの会は1月24日、環境政策を前進させようとNPO・NGOが結集した「グリーン連合」と初めての意見交換会を行った。環境政策が後退しているとの認識で一致し、今後も相互理解を深めていくことにした。
環境報道が少ないのでは?
グリーン連合が発足したのは2015年の環境の日(6月5日)。呼び掛けたNPO法人「環境文明21」の共同代表で、グリーン連合の3人の共同代表の1人でもある藤村コノヱさんは「経済最優先の社会を持続可能な社会にするために、NPOやNGOが力を合わせて政治や社会に働き掛けようと設立。各団体とも自分のことで忙しいし連携には手間暇がかかる、個性的な人も多い。しかし地球環境が深刻化する中でそんなことを言っていられなくなった。NPOとして次世代のために良い環境政策を後押ししたい」と説明した。
NPO側出席者は、藤村さんと「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」の中下裕子さんの2人の共同代表のほか、「菜の花プロジェクトネットワーク」「原子力資料情報室」「ただすのもり環境学習研究所」「オーフス条約を日本で実現するNGOネットワーク」の代表者ら。「環境報道が少ないのではないか」「どういう内容や提供方法ならメディアとして取り上げやすいか」と問題提起があった。
育たぬ専門記者、役所中心の取材
環境ジャーナリストの会は水口哲会長ら10人が出席。「ローカル面も含めると環境報道そのものが減っているとは思えない。ニュースにはそれなりの価値が必要で、『環境に良いことをしている』だけでは大きく報道できない」「構想として面白いと思っても、テレビは映像が伴わないとつらいところがある」「日本の報道には波がある。盛り上がった時は大きく報道するが、熱が冷めると……。諦めずにやっていくしかない」などの意見が出された。
さらに、「目先の紙面づくりにきゅうきゅうとしていて専門家を育てようとしていない。記者クラブの記者も1~3年でころころ変わり、クラブに情報を投げ込めば報道してくれる時代ではなくなった」「日本の記者は政府のブリーフィングを追いかけて記事を書いてきた。役所中心、大企業しか見ていなくて、小さな産業には目を向けない」「オスプレイ事故の際、沖縄の新聞は『墜落』と書いたが、本土の新聞は『大破し不時着』と表記。政府が不時着と言うから不時着と書いているようで、事故の矮小化に乗っているのではないか」などと自省の弁も出た。
まずは個人的な信頼関係を
実は、1年半前の設立総会・シンポジウムを取材。会場の衆議院議員会館の部屋には約130人が集まり、用意した椅子では足りなくなるほどの熱気にあふれていた。大久保規子・大阪大学大学院教授が「国内には5万を超すNPO法人が設立され、うち27%が環境を活動分野にしているが、多くは行政の補完にとどまっている。知る・参加する・チェックする権利を確保しながら、環境政策を強化していくためにはNPOがつながり、対策を示していくことが必要」と訴えた。
発足時の65団体は今、約80団体に増え、環境省や国会議員らとの懇談会を行ったり、地域交流会を開催してきたという。昨年5月には『市民版環境白書2016 グリーン・ウォッチ』を発行、「政府の環境白書にはない市民の視点、専門性を盛り込んだ」と自負する。ただ、全国規模の自然保護団体などは参加しておらず、財政や専従体制など克服すべき課題も多そうだ。
多くの意見が出された中で、菜の花プロジェクトネットワークの藤井絢子さんは「メディアが発信してくれたことで運動が全国に広がった。記者が異動先から『いま琵琶湖はどうなっているか』と連絡があり、戻ると顔を出してくれる」と、複数の記者名を挙げて指摘。記者側からも「NPOから専門的でインパクトのある情報を提供してもらいたい」との声が上がった。こうした交流を定期的に行い、NPO側も記者もより良い環境政策を求める「同志」として個人的にも信頼関係をさらに深めていけばいいのではないか。