フロント/話題と人沖 大幹さん国際連合大学上席副学長
2017年01月15日グローバルネット2017年1月号
現役の東大教授で国連大学上席副学長に就任
国際連合大学上席副学長 沖 大幹さん
昨年10月に国連大学上席副学長に就任した。国連大学は、国連とユネスコの共同支援により東京に本部を置き、世界各国の学術機関や研究者との連携・協力によって地球規模の諸問題の解決に取り組んでいる。
水文学(すいもんがく)を専門とする、東京大学生産技術研究所の現役の教授。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発行する評価報告書の執筆者としても長年の実績がある。「東大と国連大学ではできることが違う。国際社会がどのように合意形成されているか、『国連』という組織がどうなっているのか、興味があった」と多忙な身でありながらこのポストに就いた理由を語る。
上席副学長就任直後から、次のIPCC評価報告書では各国の政治家の判断材料となるための情報をもっと盛り込むべきとの考えを述べている。「どれくらいの対策をすると、どれくらいの効果が出るのか、包括的、定量的に推定した結果を示せば、政策決定者にも『やっぱり温暖化対策は社会にとって得なんだ』と明らかになるのではと期待しているのです」との弁は、政策決定者の重い腰へのいら立ちにも受け取れた。
IPCCの報告書では、温室効果ガスの排出を抑制する「緩和策」については、費用と排出削減量との関係が示されているが、気候変動に対しての人間社会の在り方などを調整していく「適応策」についてはやっと取り上げられるようになったところだ。沖さんは「適応策は、持続可能な開発目標(SDGs)として2015年に国連が示した行動計画と重なる部分が多くあり、後押ししたい」という。SDGsとは、国連が掲げる17の目標と169のターゲットから成る持続可能な開発のための長期目標。企業やNGOなど各ステークホルダーの参画が期待されている。沖さんは、SDGsに関する海外の先進的な情報を、国連大学を通して発信していく仕組みを構想中で、今年の夏までには具体的な取り組みが打ち出される予定だ。
「一日は24時間、トライできることには積極的に関わっていきたい」と、世界各国の関係機関と連携しながら、日本の持続可能な社会への貢献を目指す。子供の小学校のPTA会長も務める子煩悩な父でもある。52歳。 (智)