環境条約シリーズ296国際航空によるCO2排出量の相殺・削減計画CORSIA
2016年11月15日グローバルネット2016年11月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
全世界の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、国際航空に起因する排出量は2%ほどである。その排出量の削減は利害関係が複雑なため、気候変動枠組条約の下のパリ協定(本誌2016年2月)の対象とはされていない。その排出量に関して、国際民間航空機関(ICAO)は、航空燃費を2021年から50年まで毎年2%改善する目標を2010年に定めた。しかし、その目標だけでは、国際航空による排出量は2020年から35年までに10億t程度増えるとされる。というのは、世界の航空需要が急増しているからであり、そのCO2排出を規制する必要が改めて指摘されている。
そのため、ICAOは、市場本意世界措置(GMBM)計画の策定に取り掛かり、2016年9月27日からカナダで開かれた第39回総会において、そのための実施計画として、国際航空CO2相殺・削減計画(CORSIA)を全会一致で採択した。CORSIAは、2021年以降、国際航空からの年間総排出量が20年のレベルを超えないことを目標としている。具体的には、低燃費機やバイオ燃料の活用を促すとともに、総排出量が20年を上回る場合は、その超過分を各航空事業者に割り当て、CO2排出を削減した他の企業などから削減分を購入して相殺するよう求めている。CORSIAは3段階から成り、小規模事業者を除いて、参加国間の国際線に就航するすべての航空事業者に対して適用される。
まず、試験段階は2021年から23年までで、参加および相殺は任意である。次に、第1段階は2024年から26年までで、対象は試験段階からの継続参加国と新規任意参加国であり、相殺は義務である。
以上の各段階への参加はすべての国に奨励され、とくに先進国には率先参加が望まれている。それに応えて、アメリカ、中国、EU諸国、日本など、60ヵ国以上が試験段階への参加を表明している。
第2段階は2027年から35年までで、後発途上国・小島嶼途上国・内陸途上国を除き、2018年において世界の国際線有償貨物トンキロの0.5%以上を占めるすべての国が参加対象で、相殺は義務である。