特集/再生可能エネルギーの普及における固体バイオマスの持続可能性とは?日本の木質バイオマス燃料の輸入状況

2016年10月15日グローバルネット2016年10月号

日本製紙連合会常務理事
上河 潔さん

実情と整合性が取れていない森林・林業基本計画

林野庁の今年5月に閣議決定された森林・林業基本計画では、用途別の木材利用量について「燃料材」が初めて追加された。燃料材の利用目標量は、2030年には総需要量が約900万m3に対して、約800万m3。2030年のエネルギーミックスでは、一般木材は約4,000~5,000万tと相当な量が必要になることが見込まれており、数字の整合性が取れていない(図5)。

製紙連合会ではこの計画が発表された際、「2030年の燃料材の需要量や国産供給量は、政府のエネルギーミックスと整合性が取れていないのではないか」と意見を伝えたが、それに対し林野庁は「今後の検討課題」になると回答した。本計画では需要量と国内の供給量の差の100万m3ぐらいは輸入するということだが、実際には固定価格買取制度(FIT)の一般木材の認定がさらに進み、一般木材、しかもおそらく輸入材の需要が今後大幅に増える、ということになるだろう。

大型の発電施設の増加

最近、FITによるバイオマス発電施設は発電能力が5万~7万5,000kWの規模の大きなものが増えており、必要とするバイオマスは輸入木材を想定しているプロジェクトも増えている(図6)

このような状況に対し、日本の各商社はFITの需要に対応し、海外の生産拠点の造成や、生産能力の拡大など、今後、大量の木質バイオマスを輸入して対応する計画を立てている。

燃料用の木材チップ使用量(図7)を見ると、差分の約33万tが製紙以外の使用量と考えられるが、実際には木質ボードに使われるものもあるため、現段階では燃料用の輸入木材チップは非常に少ないことがわかる。

一方、木質ペレットの輸入量は急増(図8)しており、とくにベトナムや中国からの輸入が最近非常に増えている。国内の生産量も増えているが、国内のペレット生産工場は海外の工場に比べて規模が小さく、今のFITの需要に対応できる体制にはなっていない。 PKS(やしがら)の輸入量も大きく増えている(図9)。ほとんどがマレーシア、インドネシアから輸入している。

製紙業界の違法伐採対策

製紙業界は 2006 年 4 月以降、林野庁のガイドラインの個別企業の独自の取り組みによる方法に基づき、使用するすべての木材原料について合法性を確認している。政府調達を対象としたグリーン購入法については、合法性を確認する方法として林野庁のガイドラインが示されており、その中で①森林認証による方法②団体認定による方法③個別企業の独自の取り組みによる方法の 三 つの方法が合法性を確認する方法として定められている。製紙企業については、③で合法性を確認している。

日本製紙連合会は、2006 年 3 月に「違法伐採問題に対する日本製紙連合会の行動指針」を策定し、会員企業は、違法伐採木材は絶対に使わないと明確に宣言している。さらに、2007 年 4 月からは、会員企業の独自の取り組みに客観性と信頼性を担保するために、「違法伐採対策モニタリング事業」を実施している。

今年5月に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」が成立し、木材・木材製品を取り扱う企業は木材の合法性を確認しなければならない。この法律の対象に木質バイオマスが対象になるかは明確になっていない。

製紙連合会はこの新しい法律に対応し、デューデリジェンス(DD)を行うシステムを独自に策定した。新法で木質バイオマスが対象になった場合は、このシステムに基づいて合法性を確認していきたい。 (2016年9月12日東京都内にて)

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