特集/再生可能エネルギーの普及における固体バイオマスの持続可能性とは?日本の木質バイオマスガイドラインと欧州の環境基準

2016年10月15日グローバルネット2016年10月号

林業経済研究所所長
藤原敬さん

環境基準のグローバル化

固定価格買取制度(FIT)などにより、木質バイオマスエネルギーの需要は急激に拡大する見通しである。しかし、供給量の見通しには制約があり、輸入木質バイオマスに依存せざるを得ないことは確実だ。

今後、欧州に輸出される木質バイオマスと日本向けの木質バイオマスが産地で競合する可能性を考えると、要求するバイオマスの森林の持続可能性を含む環境基準をグローバルな視点で見ておく必要がある。

環境基準としての林野庁の発電用木質バイオマスガイドライン

林野庁は2014年6月、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン(ガイドライン)」を公表した。

このガイドラインの下では、再生可能エネルギー電気のFITに対する消費者の信頼を確保するとともに、適切な識別・証明が行われる必要のある「間伐材等由来の木質バイオマス」と「一般木質バイオマス」の証明について、国有林、保安林、経営計画策定など持続可能な管理をされた森林からの由来と、そのことがわかる証明書の連鎖が要求される。

日本のガイドラインと英国の環境基準との比較

欧州の中でバイオマスの基準作りを先進的に進めている英国の固体木質バイオマスの環境基準には、土地基準と温室効果ガス(GHG)排出基準があり、土地基準には由来する森林の持続可能性の基準とサプライチェーンの管理に関する基準がある。再生可能エネルギーとしての木質バイオマスの環境基準について、日本と英国を比べてみる(図4)。

日本のガイドラインは、英国の固体バイオマスの環境基準の中の、由来する森林とサプライチェーンの管理からなる土地基準の部分に該当する。由来森林の持続可能性の基準については、日本と英国はいずれも持続可能性と合法性が問われているが、英国が要求している基準の具体的な適用状況を基にして日本の実態との比較検証が必要だろう。 サプライチェーンについては、英国では低リスクの地域に対し森林までのサプライチェーン管理を要求していないが、日本のガイドラインに基づく取り組みでは、その地域が高リスクを有するか低リスクか関係なく、業界団体認定事業者による管理が必要とされる。 GHGの排出基準は日本にはない。

図 英国の固体バイオマスの環境基準と日本のガイドラインの比較

今後の課題

日本の木質バイオマスガイドラインをさらに発展させるためには、土地基準に関する議論や、環境基準のグローバル化を念頭に置いた日本のガイドラインの点検、各国の環境基準の共有化、GHG排出基準の導入が課題である。

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