環境の本・アイヌプリの原野へ ―響きあう神々の謡
・国際資源管理認証 ―エコラベルがつなぐグローバルとローカル

2016年07月15日グローバルネット2016年7月号

アイヌプリの原野へ―響きあう神々の謡


写真・文●伊藤健次

日本地図の南北をひっくり返してみると、オホーツク海を囲む北海道、サハリン島、千島列島、カムチャツカ半島、そしてロシア極東がまとまりをもった場所として浮かび上がってくる。

本書には、大学に入ってから北海道の山野を歩き始めた著者が、北海道とのつながりを求め、アイヌ文化に思いを寄せながら、環オホーツクの各地を精力的に訪れ、アイヌの原風景に通じる自然と人を、写真と文章に収めている。獲物を仕留めるシマフクロウなどの生きものの写真だけでなく、著者が各地で出会う人びとの言葉は、読む側にさまざまな感情を呼び起こし、行ったこともない場所に旅をしたような感覚にさせる。

最初と最後のエッセイでは、樺太アイヌ伝来の弦楽器トンコリ奏者のOKIが登場する。このエッセイを読むと、OKIが奏でるトンコリを聴いてみたくなるかもしれない。 (朝日新聞出版、2,300円+税)

国際資源管理認証 ―エコラベルがつなぐグローバルとローカル


編者●大元鈴子/佐藤 哲/内藤大輔

自然資源を持続可能に管理する取り組みを、第三者が科学的に評価する仕組みが国際資源管理認証である。本書は木材、パーム油、水産物の認証が生産現場と地域に何をもたらすかという視点で書かれているのが特徴で、とくに国内で事例の少ない水産物の認証取得の経緯が、関係者により詳細に紹介され読み応えがある。

認証制度は消費側にとっては商品の持続可能性を判断するためのエコラベルだが、生産現場にとっては資源の持続可能性や安定的利用だけでなく、内外の人びととのつながりを構築するチャンネルとなり得るという視点がユニーク。ただし小規模が多い日本の事例と海外の大規模農園では文脈の違いが大きく、その点でさらなる分析・整理があると良かった。(東京大学出版会、4,800円+税)

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