フォーラム随想ロコモとの戦い

2016年07月15日グローバルネット2016年7月号

地球・人間環境フォーラム 理事長
炭谷 茂(すみたに しげる)

高齢になってもゴルフ、テニスなどのスポーツを楽しむ人をうらやましく思う。中にはラグビー、フルマラソンといった激しい種目に挑戦する人がいる。

私は、運動神経についてはコンプレックスの固まりである。楽しむという心境にはなれない。

それでも20代の時、近所の空手教室に通った。身体だけでなく、精神力も鍛えていると実感できた。

しかし、当時は、仕事が忙しかった上、職場までの通勤に片道1時間40分もかかり、日常の生活に疲れ果ててしまった。だんだん空手の練習から遠ざかってしまった。「もっと続けておけば良かったのに」と今は後悔している。

30代には、ゴルフとテニスを本場のイギリスでレッスンプロの個人指導を受けて本格的に練習した。英語の勉強も兼ねていた。スポーツは、プロに付いて学ぶと基礎が固まる。日本に帰ってしばらくの間だけ続けたが、時間的、経済的にきつくなった。そもそも面白くなかったので、25年以上前にやめた。

ゴルフは、やめて本当に良かった。公務員として不祥事に巻き込まれることが避けられた。業者などに誘われてゴルフをしているという先輩や同僚の噂話を時々耳にした。公務員としての倫理違反や刑事犯罪になりかねない。

40歳を過ぎたころからは、ウォーキングだけが唯一の運動になった。健康づくりにはウォーキングが最も適切だと言われる。それを忠実に実行した。平日は、職場から自宅まで2時間歩いて帰ることがあった。休日は、多摩川沿いを4時間歩き通すこともあった。30㎞のウォーキング大会にも参加した。どれも楽しく、苦痛にはならなかった。

平日は1万歩以上、休日は2万歩以上を目標にした。健康維持には一定の効果があったようだ。

4年前からジョギングを取り入れた。高齢になると筋肉量が重要だ。筋肉が減少すると消費カロリーが減少するし、寝たきりのリスクも高まる。筋肉量は、20~30歳がピークで、毎年1%ずつ減少するので、80歳になると半分になる計算である。

1ヵ月間入院した高齢者は、歩行困難になる。衰えやすい筋肉は、逆に鍛えれば増やせるので、ジョギングを始めた。ウォーキングだけでは筋肉を増やす効果が薄い。ウォーキングは、1日8千歩にとどめ、ジョギングは毎晩9時過ぎから40分間行う。

この効果は、大きかった。体重は変化しないで、体脂肪率が10%に落ちた。筋肉量が増えたのだ。中性脂肪は半減、善玉コレステロールは3割増加した。この結果に気を良くして、走ることは、苦しいけれど、今も継続している。

65歳くらいから駅の階段の上り下りに自信がなくなった。体がよろめく。手すりにすぐにつかめるところを歩く。

最近テレビや新聞がロコモ(運動器症候群)について頻繁に取り上げている。片足で1分間立っていられないとロコモだという。試したら、10秒もできない。「こんなはずはない」と思って、再チャレンジしても結果は、同じ。トリム体操など運動に精を出している妻は、5分くらいは得意そうに立っている。立ったまま靴下を履けないとこれもロコモだという。そう言えば、最近は座って靴下を着脱している。

ロコモの原因は、インナーマッスルの弱体化である。ウォーキングやジョギングだけでは不十分なようだ。

最近はスポーツジムが人気がある。退職した私の知人も通っている。コーチが科学的に効果的な方法を教えてくれるから、インナーマッスルも鍛えられるだろう。

私は自己流で行うことにした。テレビで紹介されていたスクワットと片足立ちである。夜にスクワットを50回、片足立ちを左右それぞれ1分間(途中体が揺れることがあるが)がメニューである。

未だ効果が表れないが、そのうちにきっと……。

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