環境条約シリーズ291海洋汚染防止法の下で、CO2の海底下地層への貯留許可が初申請
2016年06月15日グローバルネット2016年6月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
海洋投棄に関するロンドン条約の96年議定書が2006年に改正され、海底下地層に貯留される二酸化炭素(CO2)が投棄許可リストに追加された。それを受けて、海洋汚染防止法が改正され、CO2の海底下廃棄に関する許可制度が創設された。それにより、CO2の回収・貯留(CCS)のうち、海底下地層への貯留が日本において可能となった(本誌2007年8月)。
その最初の許可申請が経済産業省より2016年2月22日に提出された。申請されたのは、製油所のオフガス(大量の石油を処理するプラントで、製品として出荷される以外に未利用で放出されるガス)から回収されたCO2を用いたCCSトータルシステムの実証試験である。具体的には、CCSの事業化に向けて、CO2の圧入技術、その長期挙動予測シミュレーション技術、その監視技術などの基盤技術の実証が行われる。
その実証試験は北海道苫小牧港の港湾区域内で実施され、その海底下の地層である滝ノ上層と萌別層に貯留される。この場所は、全国115ヵ所の候補地から、石油・ガス開発による既存データと、実地調査による技術的評価に基づいて選定された。貯留されるのは、CO2が体積比98%以上である特定二酸化炭素ガスであり、滝ノ上層に750t、萌別層に60万tである。
実施期間は2016年4月1日から5年間であり、圧入期間は、萌別層は2016年4月1日から3年間、滝ノ上層は2017年1月1日から2019年3月31日までである。汚染状況の監視計画としては、通常時、懸念時および異常時に分けて、当該地層およびCO2の状態、海水の化学的性状、海洋生物および生態系の状況などについて確認することが定められている。
上記申請の概要の公告と関連文書の縦覧は、2月26日から行われ、当該申請に関する意見募集も行われた。提出された意見書を含めて審査の結果、法令上の許可基準に適合していると認められ、3月31日に環境大臣の許可が出された。併せて、その申請海域は、漏出防止のために海底形質の変更の規制管理が必要な海域として指定された。