フロント/話題と人ペグ・パットさん
NGOマーケット・フォー・チェンジ(MFC)代表
2016年04月15日グローバルネット2016年4月号
マレーシア・サラワク州産木材の購入一時停止を日本企業に呼び掛ける
ボルネオ島の北西部に位置するマレーシア・サラワク州は、面積の8割以上が森林に覆われ、林産業が主要産業の一つ。その森から切り出される熱帯材を原料にした合板の半分以上は日本向けに輸出され、住宅の床材やコンクリート成形のための型枠として使われている。
ペグさんが代表を務めるNGO「マーケット・フォー・チェンジ(MFC)」が発表したレポート『フローリングへと変貌する熱帯林』では、サラワク材のサプライチェーンで起きている環境社会影響を食い止めるために、買い手である日本企業に購入の一時停止を呼び掛けている。
今年の2月にサラワク材を使用・購入しているマンション開発事業者や住宅メーカー、商社等の日本企業67社に対してアンケート調査を行い、調達方針の有無やその実施状況、サラワク材のリスクの認識度やサラワク材使用の把握の実態等を尋ねた(回答企業は24社)。その結果を見ると、指摘されたリスクを認識しながらも即時の購入停止を表明すると回答した企業はなく、使用制限を設けるとしたところもほとんどなかった。
また「商社を通して購入しているので合法だと確信している」と回答した企業が複数あった点について、「サラワク材の調達については合法性さえ担保すれば問題は解決するという考えでは大きな課題が残ります」と強調するペグさん。マレーシアの連邦憲法で定められた先住民族の土地に関する慣習的権利をめぐる訴訟が数百件起きており、サラワク州政府が発行する書類やサプライヤー企業の主張だけを信用していると大きなリスクを背負うことになると、ペグさんは指摘する。「自らが取り扱う木材が違法伐採や人権侵害に加担しないための対策として、自らの調達方針を作り、第三者による検証を交えつつ、方針を継続的に実践していくことが重要です」。
オーストラリア出身のペグさんは英国の大学を卒業し、帰国して国内外の森林保護活動に取り組んだ後、緑の党からタスマニア州議会に進出。15年間務めたタスマニア州議会議員を2008年に引退した後は、森林保全や気候変動など国際的な環境問題にも関与。2012年より現職。 (希)