附属書W 地中海北部のための地域実施附属書
第一条 目的
この附属書は、地中海北部地域の特別の状況に照らして、同地域の影響を受ける国である締約国においてこの条約を効果的に実施するために必要な指針を提供し及び取決めについて定めることを目的とする。
第二条 地中海北部地域の特別の状況
第一条に規定する地中海北部地域の特別の状況には、次のことを含む。
P 半乾燥の気候条件が広大な地域に影響を与えており、季節的に干ばつが発生し、降雨量が大きく変動し及び突然のかつ激しい降雨があること。
Q 土壌が堅い地表を形成しやすく、やせており、かつ、極めて侵食されやすいこと。
R 起伏が一定せず、斜面のこうばいが急であり及び地形が極めて多様であること。
S 頻繁な火災により森林が広範囲で失われていること。
T 伝統的な農業が土地の放棄並びに土壌及び水の保全のための構造の悪化を伴う危機的な状況にあること。
U 深刻な環境上の損害(帯水層の化学的汚染、塩類化及び枯渇を含む。)をもたらす持続可能でない水資源の開発が行われていること。
V 都市の発展、産業活動、観光及びかんがい農業の結果として沿岸地域に経済活動が集中していること。
第三条 持続可能な開発のための戦略的な計画作成の枠組み
1 国家行動計画については、地中海北部地域の影響を受ける国である締約国の持続可能な開発に関する戦略的な計画作成の枠組みの中心的なかつ不可分の一部とする。
2 条約第十条2Uの規定に従い、地方の最大限の参加が可能となる弾力的な計画作成によって戦略についての指針を与えるため、政府の適当な段階、地方の地域社会及び非政府機関が関与する参加型の協議手続を実施する。
第四条 国家行動計画の作成に関する義務及び期限
地中海北部地域の影響を受ける国である締約国は、国家行動計画及び適当な場合には小地域、地域又は共同の行動計画を作成する。これらの計画の作成は、できる限り速やかに終了させる。
第五条 国家行動計画の作成及び実施
地中海北部地域の影響を受ける国である締約国は、国家行動計画を作成し及び実施するに当たり、条約の第九条及び第十条の規定に従って、適当な場合には、次のことを行う。
P 自国の行動計画の作成、調整及び実施に責任を有する適当な機関を指定すること。
Q 地方当局及び関連する非政府機関の協力を得て、影響を受けている住民(地方の地域社会を含む。)を地方の働きかけによる協議手続を通じて自国の行動計画の作成、調整及び実施に関与させること。
R 砂漠化の原因及び影響を評価し並びに行動のために優先される分野を決定するために影響を受ける地域における環境の状況を調査すること。
S 行動計画において戦略を立案し及び活動を定めるため、影響を受けている住民の参加を得て過去及び現在の計画を評価すること。
T PからSまでに規定する活動から得られる情報に基づいて技術上及び資金上の計画を作成すること。
U 計画の実施を監視し及び評価するための手続及び基準を定め及び利用すること。
第六条 国家行動計画の内容
地中海北部地域の影響を受ける国である締約国は、自国の国家行動計画に次のものに関連する措置を含めることができる。
P 法的な、制度上の及び行政的な分野
Q 土地の利用形態、水資源の管理、土壌の保全、林業、農業活動並びに牧草地及び放牧地の管理
R 野生動植物その他の形態の生物の多様性の管理及び保全
S 森林火災からの保護
T 代替の生活手段の促進
U 研究、訓練及び啓発
第七条 小地域、地域及び共同の行動計画
1 地中海北部地域の影響を受ける国である締約国は、条約第十一条の規定に従い、国家行動計画を補完し及びその効率性を高めるために小地域又は地域の行動計画を作成し及び実施することができる。地中海北部地域の二以上の影響を受ける国である締約国は、同様に、当該国の間において共同の行動計画を作成することを合意することができる。
2 前二条の規定は、小地域、地域及び共同の行動計画の作成及び実施について準用する。更に、これらの行動計画には、影響を受ける地域における特定の生態系に関する研究及び開発の活動を含めることができる。
3 地中海北部地域の影響を受ける国である締約国は、小地域、地域及び共同の行動計画を作成し及び実施するに当たって、適当な場合には、次のことを行う。
P 国の機関と協力して、これらの行動計画において定めることが一層適当な砂漠化に関連する国の目的及びこれらの行動計画によって効果的に実行することができる関連する活動を特定すること。
Q 地域、小地域及び国の関連する機関の運用上の能力及び活動を評価すること。
R 地中海北部地域の締約国間における砂漠化に関連する既存の計画及びその国家行動計画との関係を評価すること。
第八条 小地域、地域及び共同の行動計画の調整
小地域、地域及び共同の行動計画を作成する影響を受ける国である締約国は、各国の代表者によって構成される調整のための委員会(砂漠化に対処することに係る進捗状(ちよく)況について検討し、国家行動計画を調和させ、小地域、地域又は共同の行動計画の作成及び実施の種々の段階において勧告を行い並びに条約の第十六条から第十九条までの規定に従って技術協力を促進し及び調整するための中央連絡先として活動するもの)を設置することができる。
第九条 資金援助についての適格性
地中海北部地域の影響を受ける国である先進締約国は、国家行動計画並びに小地域、地域及び共同の行動計画を実施するに当たって、この条約に基づく資金援助を受ける資格を有しない。
第十条 他の小地域及び地域との調整
地中海北部地域の小地域、地域及び共同の行動計画については、他の小地域又は地域(特にアフリカ北部の小地域)と協力して作成し及び実施することができる。